最年長勝利投手の最大の武器は鈍感力。同僚・岩瀬もあきれたドラゴンズ山本昌の筋金入りの”しつこさ”
9月5日、偉大なる記録が誕生した。中日ドラゴンズ・山本昌が1950年に阪急ブレーブスの浜崎真二が中継ぎでマークした最年長勝利記録(48歳4カ月)を64年ぶりに塗り替えたのだ。そんな山本昌はまさにお立ち台で発した「しつこい」を体現する投手である。
2014/09/18
ゲームを普通にクリアするだけでは物足りない
彼が夢中になったもう一つのゲームがRPGの代表作『ドラゴンクエスト』。主人公がモンスターを倒しながら成長していくというゲームストーリーだが、凝り性の山本昌は当然、普通にクリアするだけでは飽き足らない。
レベルを99まで上げ、各パラメーターを最大値までアップさせるのは当たり前。このゲームには、小さなメダルという隠しアイテムがあるのだが、そのメダルをすべて集めるまでやり込んだ。
完全攻略本などなかった時代に、山本昌が執ったのはローラー作戦。ゲーム内世界のすべての場所を訪れ、やまびこの笛(※ゲーム内の物探しの道具。笛を吹いて、音が返ってきたら、その周辺に探し物があるという合図)を吹きまくってメダルを集めたそうだ。
一度、プロ入り2年目の頃の岩瀬仁紀にそのメダル集めを手伝わせたことがあった。「この洞窟で、画面が変わるたびに笛を吹いてくれ」と頼んだそうだが、30分後、岩瀬は「山本さん、もう帰っていいですか……」と部屋を後にしたという。
無理もない。本来は敵を倒して楽しむゲームのはずなのに、滅多に鳴らない笛を吹かせ続けられたのだから……。後に歴代最多セーブ記録を打ち立てる男も、昌のしつこさだけには舌を巻くほかなかった。
山本昌本人は、自らのしつこい性格の根源は「鈍感力にある」と笑い飛ばす。
「30代後半の頃、周りは『もう(現役を)辞めればいいのに』と思っていたかもしれない。でも、本人は気づいていなかったんだろうね。それどころか『まだやれる!』と思っていた。その結果、しつこく続けている。鈍感でプラス思考……タチが悪いよね(笑)」
プロ野球史上最年長選手の現役生活を支える“しつこさ”は、筋金入りなのだ。