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大変革は不要――。阪神・藤浪晋太郎が果たしていた“責任”と改善すべき“1つのポイント”【データで解く野球の真実】

昨季は7勝11敗と負け越し、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表に選出されながら登板機会にあまり恵まれなかった阪神・藤浪晋太郎。入団以来華々しいキャリアを歩み、成長を遂げてきた若きエースは今、“踊り場”に立っているようにも映る。だがデータ上では、昨シーズンの藤浪はこれまでと遜色ない成績を残していた。

2017/04/04

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DELTA/Getty Images



明確な課題は見えたものの、責任を果たしてもいた昨シーズン


 立ち上がりに苦しんだという意味で象徴的だった登板である1回で7失点を喫し降板した8月30日の中日戦について、藤浪が捕手の構えに対してどんな位置に投じていたかを確認してみる。この日の(D)の投球割合は53球中26球。実に49%が捕手の構えから遠い位置に記録されている。
 
 ずれ方も全体的に捕手の構えよりも高めにずれており、右上の方向に大きく抜ける球も多い。左右よりも高低のずれが大きいのが藤浪の特徴といえるかもしれない。いわゆる「球がうわずっている」という状態であろうか。こういったずれの修正は、立ち上がりの改善を図る上で欠かせないだろう。
 
 なお、1つ言えそうなのは、こうした傾向を考えると現時点で藤浪のブルペン適性はあまり高くないということだ。先発からはずれてからの日本代表での処遇は、妥当であり好ましい判断だったのかもしれない。
 
  だが、ここまで書いてきたような課題は抱えつつも、トータルで見たとき藤浪が昨シーズン見せた投球は決して悪いものではなかった。
 
 投手の成績を評価する数字は様々あるが、アメリカなどでの研究では、投手の実力が表れやすく最初に評価すべき数字は「奪三振能力」「四球を与えない能力」「ゴロを打たせる能力」の3つに関するものと考えられている。勝利数は味方打線からどれだけ援護を受けられるかに依存し、被安打や失点、防御率などは味方の守備に左右される部分も大きいと考えられている。
 
 この3要素において、藤浪の数字はこの3年間で大きな変化は見せていない。2015シーズンから昨シーズンにかけて奪三振能力を表すK%(奪三振/打者)が若干下がっているものの、ゴロ率(打球に占めるゴロ打球の割合)が上昇しており、結果の出なかった昨シーズンも、過去2年に対して遜色のあるものではなく、リーグ内でもかなり優れた部類に入るものだった。
 
 前述の初回に7失点を喫した試合でも、失点する過程においては内野安打が3本絡むなど不運な面もあった。コマンドという藤浪が背負うべき問題があったのは事実だが、失点の全てが藤浪の責任というわけではない。
 
 プロの世界では「結果が全て」という言葉がよく使われる。責任感が強い選手ほど多く口にするようにも思う。だが、現実には結果に対し選手がコントロールできる範囲というのは限られている。その範囲において藤浪は一定の責任を果たしていたと言える。今必要なのは、パフォーマンスを高めるための大きな変革というよりは、立ち上がりのコマンドの改善に代表されるパフォーマンスのムラを減らすための調整であろう。

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