De筒香が貫くプロ精神。絶不調でもノーコメントなし、“当たり前”を続ける主砲の矜持
安打は出るものの、チャンスで一発が出ず苦しんでいる横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智外野手。NPBの多くの選手は不調のとき口を閉ざすが、日本の主砲はどんなときでもしっかりとメディア対応を行う、プロフェッショナルな精神を持っている。
2017/04/14
指揮官も筒香をリスペクト
かつてニューヨークメッツに所属したころ、人柄を評価された選手に対して記者から贈られる「グッドガイ賞」を受賞した吉井理人氏(現日本ハムコーチ)が、MLB選手とNPB選手のメディア対応についての違いを語ってくれたことがある。
「向こうでは入団したときにメディア対応についての講習がありました。その中では“行儀よくしなさい”というのはもちろん、プレーに対して試合後に話すところまでが選手の仕事だと言われましたね。だから僕は、打たれても抑えても必ず記者の前に出ていって喋っていました。MLBでは日本みたいに調子が悪かったら記者を避けるとか、ノーコメントを貫くというようなことはまずないです。考えてみたら当たり前のことなんですけど、『調子が悪かったらからコメントはありません』という態度をとるのは、仕事を放棄しているようなものだと思います」
当然、MLBにもインタビューを受けない人がいないわけではない。しかし、そうした選手は必ずと言っていいほど、メディアから徹底的に叩かれる。そこにあるのは相互のプロとしての意識だ。吉井さんは「選手の評価基準がしっかりしているので、(メジャーの選手が)世間からリスペクトされる理由なのでは」とも語っていた。
試合後、アレックス・ラミレス監督は筒香の状態について訊ねられるとこう答えていた。
「野球なので、打つ時もあれば打たない時もある。今日の試合のようなことは起きる。彼はもうすぐ目覚めると思います。今日のバッティング練習中も話しましたけど、お前自身を変える必要はないよと。しっかり投げてくるいいピッチングを見逃さずにしっかり打ってくれ、と。それくらいしか言うことはない」
指揮官の言葉から感じるのは主砲へのリスペクトだ。
相互関係がしっかりと構築されているから、“信頼”という言葉以上の大きなものを筒香に寄せたくなるのかもしれない。だから、指揮官はどれだけ成績が上がらなくても、彼の姿勢を称え続けるのだろう。
「自分が打っても負けたら意味ないですし、チームが勝つために毎日やるだけです」
そういって筒香は車に乗り込み、帰途についた。
人としての姿勢が崩れることがない。このプロフェッショナルな精神こそ、筒香が日本球界の最高の打者へと向かわせたのだろう。
あと一本の大事な場面で打たなかった選手に、感動をしたのは初めてのことかもしれない。