怪物の投球フォーム論争 「日本時代ともメジャー時代とも違う」松坂大輔の完成へ
松坂の投球フォームに対して、評論家や野球ファンからさまざまな意見があがっている。しかし、これまでも松坂は数々のモデルチェンジを重ねながら実績を積み上げてきた。周囲の雑音をシャットアウトして、ニュー松坂大輔の完成を目指す。
2015/02/10
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ニュー松坂大輔の完成を目指して
松坂自身、国内復帰への道のりが平坦でないことは、重々承知している。
キャンプ初日。スパイクではなくアップシューズを履いたままブルペンに入った松坂は、報道陣を締め出しシャットアウト。密室で約100球を投げ込んだ。
「集中してやりたかった。修正していく時の姿はきれいではないから」
メディアにはこう理解を求めている。言葉に偽りはないだろう。今のままでは、環境が変わった日本球界では望んだ結果を残せないことを、よく理解している。
スパイクではなくアップシューズだったことから、フォーム自体の大きな変更や、肩・肘の問題ではない。
おそらく推察されるのは、日米で土質が全く違う、日本のマウンドへの対応を考えたのではないか。
マウンドの違いでいえば、米国は粘土質で固い。踏み込む左足はがっちりロックされる。よく言われるのは、下半身主体で投げる投手は日本が、上半身主体は米国のマウンドが合う、ということ。
実際、来日する助っ人投手は、日本人と比べると立ち投げで上半身の力でパワーボールを投げ込んでくる。逆にメジャーへ挑戦する日本人投手は、日本時代に比べ投球時の歩幅を縮める選手が多い。
その環境の違いに適用しようと実験を施したのが、初日の密室ブルペンだったのではないか。
5日のスパイクを履いた初の本格投球では、松坂は事前に佐藤コーチに「長年の悪い癖が体から抜けないので。相談させてもらってチェックをお願いしました」と自ら申し出て、背後に立ってもらった。こちらはまた、狙いが異なる。
下半身と連動させて、上半身の動きを日本流にアジャストさせる。肘の高さ、肩の開きだけではなく、最も大切なのは連動性。松坂は「ただ単に体の開きを抑えるためではなく、効率よく腕を振っていく作業。早く感覚をつかみたい」と話している。
あまりに以前と変わった姿に、周囲は色めき立った。だが、松坂自身に焦りや不安の色は見えない。
逆にそれだけ、甲子園を沸かせ、五輪やWBCの国際舞台でも輝いた以前の松坂の勇姿が、みんなの脳裏に深く刻み込まれている、ということなのだろう。
フォーム解析に一家言ある工藤監督からは、マイペース調整のお墨付きをもらっている。
日本時代とも、メジャー時代とも違う。ニュー松坂大輔の完成を目指して。そのための正しい道筋は周囲よりも、本人が一番よくわかっている。