再びあの場所へ。抑えの魅力に取り憑かれた男、日ハム・増井。意識の変化が生んだ新たな“投手像”
昨季後半、先発としてチームを支えた北海道日本ハムファイターズの増井浩俊。今季は自ら志願し、再びクローザーに戻ってきた。昨季の不調を生かし、ニュースタイルを身に着けたからこその変化がある。
2017/05/15
増井が感じるクローザーの面白さ
日本ハムのクローザー・増井浩俊がその存在感を見せつけている。
14日の千葉ロッテマリーンズ戦の9回裏に登板すると、無死からジミー・パラデスの右翼前安打と四球などで1死二、三塁のピンチを作るも、アウトローのストレートを軸に、変化球をちりばめて、代打の福浦和也をフォークで見逃し三振、清田育宏をストレートで空振り三振に斬って6セーブ目をあげた。
「マウンド上でアジャストするまでに時間がかかってしまいましたけど、エンジンがかかってからはしっかり強いボールを投げられた。1死二、三塁のピンチになってからはいつも通り三振を狙いにいきました」。
増井はそう試合を振り返った。
自ら志願して返り咲いたクローザーのポジションだった。
昨季はシーズン途中から先発に回り、7勝1敗1完封。防御率1.10、先発としてのゲームメイク能力を示すQS率は87.5%をマークした。エースの大谷翔平が離脱した時期があったから、ローテーションの役割を果たした投手陣の中では、“エース”とも呼ぶべき活躍だった。
しかし、増井はその座に居座ろうとはしなかった。
プロ入りして8年目、2015年には自身最多の39セーブをマークするなどクローザーとしての地位を確立した増井にとって、自分の働き場所に対する想いが強かったのだ。
「(クローザーは)1球が本当に大事で、バッターと勝負しているというのを感じられる。そこがやっぱり面白いなと。野球人生の中で、そんな感覚でプレーすることはなかったので、クローザーの魅力に取りつかれました。もちろん、怖さはありますけど、そこで抑えたときの快感というものが先発で抑えた時よりも全然違いますし、自分が抑えることができたという感覚がクローザーのときの方が大きいんです」
昨季は日本一に輝いたが、本人にとっては悔しさもあったシーズンだった。「クローザーとしてしっかり1年間をやるという目標を立ててやっていたので、その目標が達成できなかった悔しさがあった」と昨季を振り返っている。
もっとも、昨季、先発投手としてシーズンの後半を回ったことのプラス効果は感じている。今季になって冴えを見せているアウトローへビシバシ決まるストレートはそのひとつだ。
「フォームを修正して、ラインを間違わないようにやってきているので、そこでコントロールが安定してきてしっかり投げきれてきている」
昨季の増井がクローザーとして結果が出なかったのは、身体に力みが出てしまっていたからだ。指揮官の栗山英樹監督は「彼の生真面目さが出てしまって、『抑えよう、抑えよう』という気持ちが先行していた」と語っているが、シーズン当初の躓きから、力んでしまったことが不調の原因だった。
そこで先発に転向したことで、増井は新境地を見出した。