パ牽引する4人のエース。沢村賞候補によるハイレベルな投げ合いに刮目せよ【小宮山悟の眼】
現在、パシフィック・リーグでトップタイの5勝をマークしている福岡ソフトバンクホークスの千賀滉大投手とオリックス・バファローズの金子千尋投手、4勝の東北楽天ゴールデンイーグルスの則本昂大投手、埼玉西武ライオンズの菊池雄星投手が好調だ。このまま4投手が切磋琢磨していけば、相当ハイレベルの白熱したゲームを見せてくれるだろう。
2017/05/16
“ライバルの存在”は大切
ピッチング内容では、四球で自滅することがなくなった。低めにボールを集めていこうという意識が強くなっている。加えて、もともと剛速球だったのが、コントロールが良くなってストレートの質そのものが増している。
右バッターのインサイドに投げるボールが抜けることがほとんどなく、時には、意識的にシュート回転を掛けて、外にツーシーム系やチェンジアップのような抜いたボールを有効に使っている。
菊池は高校の時にメジャー挑戦の意向を示していたが、周囲の説得もあって、涙ながらに断念し、NPBのドラフト指名待ちの会見をしていた。西武に入団後は、良い事悪い事、色々と経験しながら、エースという立場になって、成績を残せばメジャー挑戦の確約をもらって今は前を向けているのだろう。
このままケガがなければ、シーズン最後までこのパ・リーグは4人がしのぎを削っていくことになるはずだ。当然、大谷翔平(日本ハム)がいればどうなっていたかという話になる。だが裏を返せば、大谷はいないけれども、この4人も大谷に負けじと素晴らしい投手たちであることを証明しているとも言える。
今後は緊迫したシーズン順位の中で、この4人の投げ合いも増えてくるはずだ。リーグを代表する投手が投げ合う試合は白熱する。
私がロッテで現役の時は、他球団では西武の渡辺久信やオリックスの星野伸之がその相手だった。同じ歳だったから、張り合いがあった。投げていて楽しかったのを覚えている。緊張感が他の試合とは異なるのだ。
お互いが投げ合うときというのはおおよそ予想ができる。1週間の登板間隔があるとして、次に彼らと対戦する機会がいつなのかを意識するのだ。極端な話、2つ前、3つ前くらいから意識している時もある。投げ合う日までは負けられないとも考える。
そして、実際に対戦になったときは勝ち負けよりも、まず先にマウンドを降りたくないと思って投げていた。チームの勝敗は自分だけではどうすることもできないところもあるが、負けたとしても、納得いくピッチングができればいいというのを心のよりどころに置く。投げ合った相手が「しんどかったな」と感じるような試合にしようと思っていた。
リーグ内にライバルという存在がいれば、お互いのレベルは上がっていく。特に若い投手は、優秀な先輩と投げ合って勝つことを目標にして投げるところがある。その中で切磋琢磨して成長していけるのだ。
則本、千賀、金子、菊池。この4人は相当にレベルが高く、沢村賞候補の投手である。今季は、彼らが投げ合うゲームは目が離せない白熱したものになると期待している。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。