西武・菊池、なぜソフトバンクに勝てない? 求められる“真のエース”への進化
今年プロ入り8年目を迎えた埼玉西武ライオンズの菊池雄星投手が、またも福岡ソフトバンクホークス戦で勝つことができなかった。これまで15戦で勝てなかった理由をバッテリーに直撃した。
2017/05/22
バッテリー間の意図が行き違っていた
一方、菊池はこの1球で炭谷と異なる感触を覚えた。
「初球にアウトコースを外して、そこで嫌な感じはありました」
そうして2球目、炭谷は外角のストライクゾーンにストレートを要求したが、菊池にとって意図しないサインだった。
「外したなら(次は)インコースと思ったけど、もう1球外に行くんだと半分びっくりした部分があって、腹決めできない状態で投げてしまいました。当然腕は振ったんですけど。外に外したなら、インコースに行きたいなという思いもあって。(それなのに)頷いてしまって、というところで。銀さん(炭谷)なりに絶対意図はあったボールですけど、僕自身がそれを理解しないまま闇雲に投げてしまったのが正直なところです」
結果、外角を狙ったストレートは真ん中に甘く入り、決勝点を献上した。
自分の腹が決まらないまま投げたことで、ボールが甘く入ってしまったのだろうか。そのように聞かれた菊池は、こう答えている。
「そうかもしれないです。でも、腕は振ったので。多少コースは甘かったかもしれないですけど、コースが甘いのはいつものことなので、そこを悔やむよりも、しっかり銀さんの意図を考えないといけないですね」
上林への1球は、悔いは残らずとも、迷いが残った。それを消化できなかったことが、接戦を落とす直接要因となった。
「雄星にも言ったんですけど、『それだったら(プレートを)外せ』と」
翌日、そう語った炭谷の声には、怒気のようなものさえ感じられた。投球の主導権はあくまで主体者のピッチャーが握っていることと、菊池に求めるレベルの裏返しからだろう。
「(腹決めできないというのは)言い訳です」
冷静にそう言った炭谷は、上林への配球の意図をこう説明した。
「雄星自身がもし2球目に内角に行ける状態であれば、というところもあります。ましてや上林は内角が多少なりとも強いと思うし、決して穴ではない。行くんだったらきっちり投げ切るか、ボールにせなあかん。内角に行くなら、僕は初球です」
そう考えた結果、2球目は外角にストレートを要求した。それが菊池にとって、最もいいボールだと思ったからだ。
しかし、バッテリーの意図は行き違い、上林に決勝打を許した。
もちろん試合直後、菊池と炭谷は上林への配球について話し合っている。意図を統一できなかったバッテリー二人の責任だと、両者は共有しているはずだ。敗戦の後にやるべきは、迷いを次に持ち越さないことである。