強いチームにあって弱いチームにない決定的なもの【里崎智也の捕手異論】
千葉ロッテマリーンズで16年プレーした里崎智也氏。現在は解説者・評論家として、野球界の“常識”に異を唱え続けている。このほど自著「捕手異論 一流と二流をわける、プロの野球『眼』」を発表した里崎氏が、野球界の発展を願い、あえて厳しい提言を送る。
2017/06/01
育成で論文を書けない球団は、選手を育てられない
――お金に潤沢な球団は限られます。となると選手をじっくり育てていくしかないですよね。選手育成のポイントは?
「大枠の話で言えば、フィジカルや技術面などすべてプログラムして、長期的・中期的・短期的なビジョンを描かないといけない。ようは、チームが育成プランに関する論文を書けるのかどうかがポイント。プランと過去のデータなどをもとに論文を書けないような組織ではダメです。選手は育たない。書けないってことはプランがないのと一緒です」
――どれだけ一貫した理論を構築して根付かせているかですね。
「そう。書けるかどうかが問題。やり方は何万通りもあり、人の数だけある。正解か不正解かは結果からでしか評価できない。書けるかどうか、言えるかどうかが勝負。そのなかで、体力数値がこうなったので技術の進歩が見込まれる、今後の課題はここになる、故障した場合はこんな方法やプランBもある、と選手に伝えられないと」
――それはすべての指導者が?
「いや、指導者にも理論派と感性派がいて、選手も両方いるんで。例えば感性派の選手に理屈で説明しても『難しくて分かりません』となる。そういう選手には『グーっとなってバーっと打つ』みたいに言った方がいい。感性派同士だと『そうっすね!』となるんで。ただ、繰り返しますけど、チームとしては理論は持っていないとダメ」
(聞き手:ベースボールチャンネル編集部)
「捕手異論 一流と二流をわける、プロの野球『眼』」好評発売中
7月15日(土)、BOOKS昭和堂にて 里崎智也氏新刊『捕手異論』発売記念 トークショー&サイン会を開催決定
里崎智也
1976年5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮高)、帝京大学を経て98年のドラフト会議で千葉ロッテマリーンズを逆指名して、入団。03年に78試合ながら打率3割をマークし、レギュラー定着の足がかりをつくる。05年は橋本将との併用ながらも、日本一に貢献。06年にはWBC日本代表として世界一にも輝いた。持ち前の勝負強さで数々の名シーンを演出。00年代の千葉ロッテを牽引した〝歌って、踊って、打ちまくる〟エンターテイナーとしてファンからも熱烈に支持された。14年限りで現役引退。現在はプロ野球解説者・評論家を務める。