今季もパ有利の交流戦。セ巻き返しのポイントは打撃とDHの使い方【小宮山悟の眼】
いよいよ今季も交流戦が始まる。シーズン前半から見ると、今年もパシフィック・リーグの成績がセントラル・リーグの成績を上回りそうだが、果たしてセ・リーグは巻き返すことができるのだろうか。
2017/05/30
交流戦のカギは“DH”
また交流戦の特徴のひとつにDH制がある。普通に考えれば、普段は使えているDHが使えないパ・リーグが不利になると思われがちだ。いつもとは野球を変えなければいけないからだ。しかし、ここ何年間を見ていると、パ・リーグは野球を変えていない。DHの分、ひとり削れてもいいやくらいの打線で思い切って攻めていくのだ。つまり、野球が小さくなっていない。
むしろ、セ・リーグはDH制になったときにその特性を活かせていない。これにはやむを得ない事情がある。セ・リーグはDH制ではないためシーズン中、ベンチには「打撃専門」の打者をあまり置いていない。限りある1軍登録枠をそこで使うわけにはいかないのだ。パ・リーグとの大きな違いだ。
そのため交流戦のDH制では、セ・リーグは今までいた選手をそこに当て込むだけで、打撃専門の選手起用をしていない場合が多いのだ。せっかくのDH制であるにもかかわらず、1枚を捨てている状態になっている。
交流戦を戦う意味においてはDHの使い方がひとつのキーになる。たとえば、巨人には村田修一、亀井善行といった打力に定評のある選手がベンチに控えている。セ・リーグではもっとも相手に脅威を与えられる打線をつくることができるはずだ。
また、交流戦はいままでと対戦相手が変わるだけに、下位に沈んでいるチームは逆襲のチャンスともいえる。組みしやすしとなれば、それまでの状況が好転するからだ。
特に最下位である中日がここで弾みを付けられるかは1つのポイントになる。違うリーグのチームと試合をして自分だけが勝ち、同一リーグの他が負けた場合は、ゲーム差を縮めることだって可能なのだ。
中日は楽しみだ。先週24日の試合ではルーキーの京田陽太の好走塁で試合を制した。中日がああいう風に個人の活躍が取り上げられたことはそう多くなかっただけに、ラッキーボーイのような存在はチームを盛り上げる。
京田に加えて、2000本安打がかかる荒木雅博がいて、リーグ最多安打の大島洋平がいる。ここに、いまひとつ本調子ではない外国人の2人(ビシエド、ゲレーロ)が絡むようになれば、チームは大きく変わることができる。
交流戦は一気にシーズンの趨勢を変えることができる。過去にも交流戦を境に調子が出たチーム、反対に交流戦からチームが急降下したチームもあった。
今季はセ・リーグがどこまで巻き返すことができるか注目したい。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。