西武・十亀剣、魔球シュートは「楽する球」。先発ローテの中心へ、鍵握る投球スタイルの使い分け
埼玉西武ライオンズの十亀剣投手が調子を上げてきた。その鍵を握るのは、使い方を変えたある球種。プロ入り6年目を迎えた右腕は、好不調の波が激しい「両極端の投手」を脱し、先発不足が続くチームを支えられるか。
2017/06/12
“決め球”の意識は捨てる
広島戦で勝利するカギとなったシュートだが、十亀にとって諸刃の剣とも言える球種だ。11勝を挙げた2015年から一転、昨季4勝6敗と大きく期待を裏切った一因は、この球にある。キャリア初の二桁勝利からさらなる上積みを目指し、15年まで封印していたシュートを再び投げ始めたが裏目に出た。
「新しく増えた球種は使おうとするじゃないですか。それがちょっと良くなくて、去年はシュートに依存しすぎました。それで真っすぐを投げるときも(体が)開いて。去年と今年では、真っすぐのスピードが4、5キロ違います。そういうところに弊害が出て、去年1年間はあまり良くなかったです」
シュートを投げることによって、ストレートに悪影響が出る投手は少なくない。その理由は変化をつけようとすることで、投球時に体が開きやすくなるからだ。
十亀の場合、ストレートからボールの握りを少しずらしてシュートを投げる。スリークオーターとサイドスローの中間のような投球フォームから、ストレートもシュートもやや三塁方向に指先を離していく。異なる点はリリースポイントで、シュートのほうがストレートより少し前だ。
そうして146キロ前後のストレート、約140キロのシュートを投げ分けるなか、上記の微差に落とし穴があり、「ストレートを投げようと思って、無意識的にシュートになるときがある」。さらに言えば十亀のストレートは自然とシュート回転するのが特徴で、“動くボール”になると威力を発揮する一方、抜けた半速球のようになると打者にとって打ちやすい。
それを防ぐべく、今季は工夫を施している。一つ目が、意識改革だ。
「今年は割り切って、“シュートを使って抑えたい”ではなく、“シュートもあるよ”というスタンスに変えました。それにより、真っすぐの走りも良くなりましたね。シュートは少し落ちますし、真っすぐは打者に対してそのまま来るので、高さの幅も出てきます。そういう意味で、僕のシュートは相手にとって邪魔になる球じゃないかなと思います」
広島戦から5日経った6月6日、2日後の巨人戦を控えて十亀はブルペンに入った。ここでの調整法が、二つ目の工夫だ。広島戦で通常よりシュートを多く投げたこともあり、この日のブルペンではストレートを多めに投げた。そうしてフォームの開きを抑え、リリースポイントを安定させようとしている。