西武・十亀剣、魔球シュートは「楽する球」。先発ローテの中心へ、鍵握る投球スタイルの使い分け
埼玉西武ライオンズの十亀剣投手が調子を上げてきた。その鍵を握るのは、使い方を変えたある球種。プロ入り6年目を迎えた右腕は、好不調の波が激しい「両極端の投手」を脱し、先発不足が続くチームを支えられるか。
2017/06/12
最大の武器は直球、シュートはスパイス
十亀自身の工夫に加え、“女房役”のアシストもある。巨人戦の前、コンビを組む捕手の岡田雅利はこう語った。
「初回からシュートを打ってくるなら、真っすぐでどんどんファウルを打たせていく手もありますね。相手と駆け引きをするところだと思います」
岡田にとって十亀のシュートは「便利球」という位置付けで、ウイニングショットではない。右腕が誇る最大の武器は、うねりをあげるようなストレートだ。このボールが、岡田がリードする上でも中心となる。
「バッテリーからすると、シュートを多めに使っていると、ピンチの場面で“本当に真っすぐを行けるのか”と不安にもなるんですよね。初めは真っすぐで押しておいて、シュートを打たせる。あるいはシュートを最初に行って、真っすぐでポンと決める。そういうふうに自分自身は使っています」
8日の巨人戦では、ストレートとカーブで緩急をつけながら相手打線を6回2失点に抑えた。同じイニングを投げた前回の広島戦では104球を投じたのに対し、この日は81球。省エネ投球ができたのは、シュートを“楽にする球”として使えたからだ。3回2死1、2塁で3番・マギー、4回の先頭打者の4番・阿部慎之助、5回2死3塁で迎えた好調の1番・陽岱鋼に対し、いずれもファーストストライクでシュートを打たせて仕留めている。投球のスパイスのように使ったこの球の効果について、試合後、岡田はこう話した。
「今日、シュートはそんなに投げないボールだったんですけど、きっちり低めコースに投げてもらえました。シュートはちょっと甘く入ったら打たれるというところもあるんですけど、首を振らずに投げてくれた十亀さんの勝ちだと思います」
これでチーム4位タイの今季3勝目。先発陣の絶対数が足りない西武にとって、貴重なピースになっている。
2011年ドラフト1位でJR東日本から入団した十亀は、1年目からその評価に違わぬ能力を示してきた。独特なフォームからうなりをあげるような剛球を投げ込み、好調時は手がつけられないような無双ぶりだ。一方、調子の悪いときは自滅する傾向が強く、“両極端の投手”という印象だった。
それがここ数試合はその日の調子によって、投球スタイルを使い分けている。「投げてみなければわからない」と言われてきた右腕投手は、“楽をする球”をこのまま効果的に使うことができれば、先発ローテーションの中心になっていきそうだ。