誤審は本当に増えてる? 映像技術とSNSの発達で“総審判時代”【里崎智也の捕手異論】
2017/06/22
“誤審”が目立つのは技術の低下が原因か?
──広島の緒方孝市監督が退場になった一件をはじめ、今季も〝誤審〟がクローズアップされる機会が多いように思います。一部には「メジャーのようなチャレンジ制を導入すべき」といった声も上がっていますが、里崎さんはそのあたり、どうお考えを?
導入するなら、それでもいいとは思いますけど、やるんだったら、MLBみたいにとことんまでやらないと意味がない。今みたいに場合によっては追えてないことすらある中継カメラの映像をもとに検証をするだけじゃ、どのみち文句は絶対に出ると思います。
──MLBでは、全球団の本拠地球場に12台の専用カメラを設置し、それらの映像をニューヨークのオペレーションセンターで一括管理しています。数十億円とも言われるそれだけの巨額投資に見合う効果が果たしてあるのか、というところでもありますよね。
同じことをやろうにも、日本の場合は、年に数回しか試合をしない地方球場はどうするのか、とか超えなきゃいけない問題も山ほどある。MLB式のシステムを仮に作ったところで、自分が応援するチームが不利益を被ったときに文句を言うのは、結局同じだと思いますしね(笑)。
──近頃よく聞かれる「誤審が増えた」という論調に対してはどうですか?
これは、今回の単行本(「捕手異論 一流と二流をわける、プロの野球『眼』」)でも詳しく書きましたけど、結局は映像の技術とSNSが発達したおかげで、観ている側の目に、より触れやすくなっただけのことだと思うんです。なにしろ、その気になればスマホで全試合が観られる今は、誰もが“リプレー検証”できる時代。一人ひとりの『今のはセーフやろ!』が、瞬時に『そうや! そうや!』と拡散するから『増えた』と感じるだけなんです。
──言わば、“錯覚”であって、審判の技術が下がっているわけではないと。
もちろん、審判は審判でそういうことが起きないように、ビデオを見返して立ち位置を工夫してみるとか、自分なりの反省点をもって次の試合に臨んでいくべきだとは思います。でも、人間がやることにミスはつきもの。キャッチャーとして一番近い場所で接してきた立場からしても、技術そのものはむしろ向上しているというのが、正直なところでもありますしね。