“画面越しの世界”は、まっすぐ歩んだ道の先にある。二木康太の一軍への道のり【マリーンズドキュメント】
プロ4年目を迎えた二木康太。今季は開幕ローテーションから外れたものの、ここまで4勝1敗で厳しい状況のチームを支えている。
2017/06/23
千葉ロッテマリーンズ
同期最後の一軍昇格、ライバルの飛躍に奮起
体力強化の成果は2年目を迎える頃に表れ始めた。ひとまわり大きくなった身体は投球にも変化を与えた。春季キャンプで二軍ブルペンを視察した伊東勤監督も「力強いボールを投げていた」と評したが、明るい話題にも二木は決して頬を緩めることはなかった。
7人いる同期のなかで、石川歩、吉田裕太、三木亮、吉原正平、井上晴哉は1年目に一軍を経験した。一軍未経験者は二木と、育成契約の同級生・肘井竜蔵だけだった。投手と野手でポジションは違うが、2人で一緒に体力強化に励むことが多く、食堂でも隣に居た。互いに今年こそはと意気込んで迎えた開幕直前の3月、支配下選手登録された肘井だけが開幕一軍を掴み取った。
「先に肘井が一軍に上がって、(未経験は)僕だけになって、そこから改めて頑張りました。ちょうどその時期は、二軍の試合で打たれて怒られることも多かったので、それも悔しくて」
一軍と二軍の選手では生活リズムが異なる。久々に寮の近くの飲食店に2人で出向いたのは、肘井が再び二軍生活となった頃だった。ライバルであり、唯一無二の同級生だ。肘井の支配下登録を祝い、その席で次なる約束を交わした。“二木の二軍初勝利祝い”。それも日を改めて無事実現されたのだった。
仲間の飛躍に奮起した二木は、着実に登板を重ねて二軍の月間MVPを獲得するまでになった。そして、2015年10月6日に念願の一軍プロ初登板を果たした。寮の食堂のテレビ越しにあった光景が初めて目の前に広がる。本拠地のマウンドで5回4安打1失点の好投。不透明だった道に、一筋の光が見え始めた。
一軍の経験は二木の表情を格段に明るくさせた。3年目の春季キャンプでは「良い年になりそうですし、してみせます!」と頼もしさを増し、言葉通りに一軍登板を重ねていった。練習時間がきっちり決められている二軍に比べて、一軍は自由な時間が多く、自主性をもって準備をする先輩たちの姿勢に驚かされた。先発ローテーションの一角を担った二木は、「風が吹いていれば真っすぐは伸びるし、フォークも落ちるので、風は吹いていてほしい。ストライク先行で、フォアボールを出さないように気をつけています」と、マリーンズの一軍選手らしく本拠地特有の風を味方にする術も身につけていった。