涙でかすんだ最終打席の1球目。森本稀哲氏が引退試合で感じた“チームメートの愛”
1998年のドラフト会議で日本ハムファイターズに4位指名され、プロ入りした森本稀哲氏。16年間の現役生活で印象に残っているできごと、試合やプレーについて聞いてみた。
2017/06/30
工藤明日香
引退試合
――引退試合の時のベンチの様子はどのような感じだったのでしょうか?
森本:あのとき、ベンチでは「稀哲さんまで回せー!」なんてみんなが話していたんです。最初は嬉しかったんですけど、最後(9回)は、1番からの打順で、僕は途中から出場したので7番に入っていたんです。
1番から始まって7番まで打順を回すって、なかなかできることではないじゃないですか(笑) だから現実的には、そんなうまく打順が回ってこないだろうなって思っていたんです。だけど、みんなの想いがつながって本当に打順が回ってきちゃった感じでしたねー。
――ネクストバッターズサークルに立っているとき、涙をこらえている姿が印象的でした。
森本:みんなが必死に回そうとしてくれている姿を見て、感動はしていたんです。でも、キャプテンで後輩のクリ(栗山巧)が必死に粘ろうとしている姿を見て、なんか申し訳ないなっていう気持ちと、2アウトの場面だったので、ここでクリが凡打したら責任を背負ってしまうんだろうなあと考えていました。だから『何としてでも回ってきてほしい』と思いながら見ていたら四球を選んでくれたので、想いが一気に溢れてしまった、という感じでしたね。
――打席に立った時も涙をこらえられている印象があるんですけど、ボールはちゃんと見えていましたか?
森本:正直に言うと、1球目は涙でかすんでしまい見えにくかったです(笑) でも2球目からはだいぶ冷静に見ることができました。
――あの時は、メヒア選手も今までに見たことない勢いで走っていました。
森本:ははは(笑) ランナーが一塁にいてメヒ(エルネスト・メヒア)がゴロ打ったときって、もうほぼ100%ダブルプレーになるんですよね。だからメヒがゴロを打った瞬間に『終わったなー』と思いながら、藤田一也選手(楽天)がファーストに投げるところをパっと見たんです。そうしたら、メヒがすでに一塁を踏んだ後だったので『メヒもそういう想いでやってくれてたんだなあ』と、感動しちゃいました。
――あの涙にはチームメイトからの愛が詰まっていたのですね。