西武・菊池がたどり着いた“新境地”。パワーだけじゃない、明らかなスタイルの変化
埼玉西武ライオンズのエース菊池雄星は、今季ここまで8勝4敗の成績を残している。防御率は2.03(7月10日時点)でリーグトップを走っているが、開幕以来すべてが順風満帆なわけではない。
2017/07/11
パワーと緩急の使い分け。明らかなスタイルの変化
どこかで菊池自身が変わらなければならない。そんな中で7日の楽天戦を迎えた。
初回、菊池は先頭の島内宏明に右翼前安打を浴びた。2番・ペゲーロの2球目にカーブを投じる。これも右翼前安打。
これまでの菊池ではあまり考えられない試合の立ち上がりだった。
菊池にとってカーブは昨季からものにした打者の邪魔をするボール。試合序盤に多投するボールではない。右打者の勝負球に使うときもあるが、試合の中で痛打されると消してしまう程度の球だ。
そのカーブを1回から投じていた。続くウィーラーの2球目にもカーブを投げた。3球目はチェンジアップ。ボール2球の後、ストレートをタイミングよく当てられたかに見えたが一飛。4番のアマダーはストレートで押し切り右飛。銀次を二ゴロに抑えてピンチを脱した。
2回は一転、パワーピッチング。今江年晶、松井稼頭央といったいぶし銀の2人を力で押し切った。三好匠をカーブで三振に取り、流れを引き寄せた。
3回裏、菊池は失策と四球でピンチを作ったが、3番・ウィーラーにはまたカーブを織り交ぜて打ち取った。アマダーも緩急を使って最後はストレートで三振。
いつもと明らかに違っていた。パワーピッチと緩急をつけたピッチングを使い分ける。これまでのように力一杯に投げ込むのではなく、力をうまい具合に抜いたピッチングはストレートの質をより向上させた。
「カーブとチェンジアップを上手く使うことができたのが良かった。その球があって、ストレートの見逃しとかに繋がったのかなと思います」
6回表にチームが3点を追加すると、もう菊池の独壇場だった。8回を投げ切ると9回も続投。この時すでに133球を投じていたが、先頭の今江を右飛で打ち取ると、続く下妻はストレートで押した。最後の打者・田中は子ども扱いするように、カーブで空振り三振に斬って取ったのである
140球の熱投、14奪三振の快投――。
「ジョンソンのピッチングに近い形ができましたね。イニングによってうまく使い分けられました。ある回は力で押して、この回は違う形でって感じでね。」と炭谷が振り返る。
この日、菊池はあの新境地に再びたどり着いていたのだ。
「前回の試合で課題になったインコースのストレートとカーブ、スライダーを上手く使えて収穫になった試合だった。いいきっかけにしたいですね」
いい形で締めくくり、オールスターブレイクを挟んでから再開するペナントへ向けて大きな手ごたえになったはずだ。後半戦、菊池はどこまで勝利数を伸ばせるか。