現有戦力への刺激策 地味な補強に隠された、原監督の”したたかさ”
昨年オフのジャイアンツは例年演じてきた大型補強から一転、地味で的確な補強を行った。ここにこそ、チーム力底上げへの原監督の狙いが見える。
2015/03/02
ポレダ先発起用の意図は?
「新成」というチームスローガンを掲げ、新たなシーズンをスタートさせた原巨人。原監督は「新たなスタート。これまでのチームを一度解体し、より強いニュージャイアンツをつくり上げ、必ずや、リーグ4連覇、日本一奪回という目標を成し遂げます」と所信表明している。
大黒柱だった阿部慎之助の一塁コンバート。坂本勇人の新キャプテン就任。沢村拓一の抑え転向や、ここ数年クローザーを務めていた西村健太朗の先発への再配置など、文字通りチームを解体させた。
その一方で、新戦力の補強はおしなべて大人しかった。例年演じてきた大型補強からは一転。その地味な補強にこそ、チーム力底上げへの原監督の狙いが見える。
野手はFAでDeNAから金城龍彦を、ヤクルトから相川亮二を獲得。そして中日から戦力外となった堂上剛裕と育成契約を結び、2月24日に支配下登録した。
投手はレンジャーズのマイルズ・マイコラスと、アーロン・ポレダと契約した。新人を除けば、補強はここまでだ。
金城はDeNAにおいて戦力外扱いとなっていた。相川に100試合以上、先発捕手としての出場を求めてはいないだろう。いずれの選手も「即戦力」と期待しての補強ではない。
あくまで現有戦力を引き締めるための、一手と見るべきだ。
起用法にもそれが表れている。マイコラスとポレダの2人は、ここまで先発投手としての調整、起用が続いている。マイコラスはともかく、ポレダはそもそも先発向きの投手とは言いがたい。
ポレダの昨年までのメジャー通算40試合のうち、先発起用された試合はゼロ。マイナー7年間の通算168試合でも、先発は59試合にとどまる。昨年は傘下3Aラウンドロックで、一時はクローザーも任され、3セーブを挙げている。典型的な、中継ぎ投手だ。
今さら、先発での適性を探る必要もない。投手は、先発から中継ぎに回すことは比較的簡単だが、中継ぎから先発へ急に適応することは難しい、というセオリーもあるだろう。だが、シーズンが始まれば、ポレダの働き場所は中継ぎになっている可能性が極めて高い。
ではなぜ、先発で調整させたのか。原監督は、昨年抑えを任せたスコット・マシソンも、入団1、2年目のキャンプでは先発で調整させたことがある。先発ローテーション候補の頭数が増えれば、当然各先発投手がオープン戦などの実戦で先発できる機会は減る。一つひとつの先発登板の場が、貴重なアピールの場になる。
その競争意識こそが、最大の目的だろう。もちろん狙いは単純に一つではなく、そこで「実はポレダは先発のほうが向いているのでは」などの新たな発見にでもつながれば「一粒で2度おいしい」わけだが。