現有戦力への刺激策 地味な補強に隠された、原監督の”したたかさ”
昨年オフのジャイアンツは例年演じてきた大型補強から一転、地味で的確な補強を行った。ここにこそ、チーム力底上げへの原監督の狙いが見える。
2015/03/02
現有戦力を刺激するメッセージ
高卒7年目の大田泰示が、紅白戦から4番を任されている。これは大田に奮起を促すとともに、周囲の選手たちの手綱をしごくことに意味があるのでは、と推察できる。
阿部を捕手から一塁へコンバートしたのは、負担を減らし打撃に専念させるためだ。当然、4番に座らせるため。その阿部が、紅白戦とはいえ同じチームで、大田の後ろの5番に座った。
面白くはないだろう。昨年不本意なシーズンを送った村田修一にしても同じだ。
負けん気に火が付くのは確か。その上で、大田が予想外の成長につなげれば、やはり「一粒で2度おいしい」結果になる。
金城、堂上は、同じ左打ちの代打で期待される高橋由伸らに。相川は、阿部が抜け正捕手候補の一番手に浮上した小林誠司に。いずれも奮起や、一層の飛躍が求められる選手に、競争相手としてぶつけた補強であることが見て取れる。
「解体」「新成」とうたったスローガンからして、3連覇を成し遂げながら、もう一つ上を求める現有戦力を刺激するメッセージなわけだ。もちろん、指揮官はその真意を口にしてしまっては意味がない。
原監督はこの3連覇中、常々「このチームはもっとできるチームだと思っています」と口にしてきた。リーグ優勝後の成績こそ、12年日本一→13年日本シリーズ敗退→14年クライマックスシリーズ・ファイナルステージ敗退、と年々尻すぼみだが、その主力たちの実力とポテンシャルは高く評価している。
一方で、3年間リーグ王座を守り続けたことで、どこかモチベーションを保つことが難しくなってくるのも事実。そこには、新たな刺激を与えてやるしかない。
その刺激が、逆効果になったり、思うように現有戦力が反応してくれないこともあるだろう。その時には、対抗馬としてぶつけたはずの刺激が、新たな立ち位置を奪える土壌もしっかり残しておく。
過渡期とも言われる難しい時期に、原巨人がさしかかっているのは確か。そこで随所に撒かれた「地味な補強」に隠されたしたたかさに、07年以降2度のリーグ3連覇に導いた原監督の手腕がにじみ出ている。
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