意外な選手もランクイン 攻撃面でチームへの貢献度が高い選手は誰?【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、攻撃面でチームへの貢献度が高い選手は誰かを紹介したい。
2015/03/02
ベースボールチャンネル編集部
チームへの得点貢献度を示す数値
野球は複雑な競技だ。打者の攻撃ひとつとっても、ヒットやホームランを打つ、盗塁をする、送りバントをする、犠牲フライを打つ、四球で出塁する……など、走者を進めて得点につなげるための手段はいくつもある。
一般的な打撃成績では、それらを総合的に評価することはできないが、セイバー・メトリクスには、RC(RunCreated)という指標がある。
これは、安打、長打(塁打)、盗塁、盗塁死、犠打、犠飛、四死球、併殺、三振というオフェンスのあらゆるスタッツを一定の比率で合算したものだ。
含まれないのは得点、打点。これはその選手の実力だけではなく、他の選手が絡んでくる。「運」の要素が大きいために除外している。
RCは、打者(走者)の生産性を表す総合指標で、選手個々の攻撃力やチームの得点への貢献度を表す指標ともいえる。打点に近い数字になるよう設計されている。RCが100を超えればリーグトップクラスだ。このRCで見ると、選手の評価が変わってくる。
2014年のNPBの打者について、RCで見ていこう。参考までに主要なスタッツも付けた。太字はリーグ1位、パリーグ20位までのランキングだ。
昨年は糸井嘉男が1位だった。首位打者を獲得したが、ヒット(単打)だけでなく、長打(二塁打や本塁打など)も打ち、30盗塁、四球を70個(84四死球)も選んでいる。様々な形でチームに貢献していたわけだ。
2位はホークスの柳田。二人の数字は非常によく似ている。柳田は身体能力が高い「5ツールプレイヤー」で糸井と並ぶ「生産性の高い」打者になっている。
3位の栗山は長打と盗塁は少ないが、リーグ最多の96四球(99四死球)。RCで見れば、打点王の中田翔より、栗山のほうが貢献度は上なのだ。
昨年売り出した中村晃も上位に来ている。
さらに、最多犠打の安達了一も18位に顔を出している。RCはこのように「何らかの形でチームに貢献度した」選手を浮き上がらせる。
数値が物語る、鳥谷の残留の意味
セリーグを見ていこう。
1位はセリーグの日本人選手のシーズン安打記録を更新した山田。193安打は圧倒的で、29本塁打、74四球(82四死球)も光っている。実に出塁数は267にもなるのだ。
2位の丸は、NPB一の「選球眼」を誇る。100四球(104四死球)は昨年両リーグで最多だ、安打数も上位だ。
2014年、MLBのアリーグのMVPは打点王とはいえ打率.287に過ぎないマイク・トラウトが選ばれた。トラウトがきわめて出塁率が高いことを評価したものだ。丸の成績はトラウトによく似ている。
4位には鳥谷がランクイン。得点への貢献度の数値だけからすれば、チームメイトの打点王・ゴメスや、マートンよりも高い。鳥谷の残留が阪神にとって、いかに大きなプラスであるかを物語る。
こうしてみていくと、昨年優勝した巨人の選手が上位にいないことに気が付く。
坂本、長野ら働き盛りの選手は、四球が少ない。安打や打点を稼いでも「生産性」はそれほど高くない。少し前までリーグ最強打者だった阿部慎之助は、四球も多かったが今はかなり減ってしまった。巨人の連覇を考えると気がかりなことである。