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谷元放出に続くメンドーサ今季途中退団報道は、2016年日本一チーム解体の始まり?【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#58】

日本ハムのチーム編成は非常に合理的だ。その方向性は理解できる一方、それが時にはファンにとって残念な感情も抱かせる。

2017/08/26

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日本におけるウエーバー公示の意味

 朝、トレンドワードに「メンドーサ」が出ていて何事かと思ったのだ。ネットのニュースに「ハム・メンドーサ 今季途中で退団へ 国内他球団移籍も」(スポニチアネックス、8/24 5:53配信)が上がっていた。記事を読んでしばらく固まってしまった。朝から大ショックだ。どうやらルイス・メンドーサがウエーバー公示されるらしい。保有権放棄だ。公示期間に手を上げる球団がない場合は自由契約になる。獲得希望の球団が名乗りを上げた場合は、(日割りした)残りの年俸をその球団に持ってもらって所属が変わる。
 
 まぁメンドーサの年俸はそれなりに高いから日ハムとしてはコストカットができる。今季はもう、CS進出は絶望的だ。来季以降のことを考えたら残り試合、若手に登板機会を与えたほうがずっと合理的である。一方、例えばメッセンジャーが故障した阪神が例としてわかりやすいが、CSも視野に入れて、実戦派の先発投手を緊急補強したいチームがあるかもしれない。そのためにメンドーサを飼い殺しにせず、市場に出すという考え方だ。感覚的には非常に米球界に近い発想。
 
「米球界に近い」けど本質的に異なるのは、日本のウエーバー公示が片道キップである点だ。アメリカでは手を上げる球団がなかった場合、元の球団に戻る道が残されている。アメリカのほうが「市場に出す」感覚が強く、日本は「戦力外」のニュアンスが強い。
 
 多くのファイターズファンが7月末のトレード期限ぎりぎりに行われた谷元圭介の中日移籍(金銭トレード)を思い浮かべていた。谷元もメンドーサも年齢やコストパフォーマンスを勘案して、外に出す判断をしたのだと思う。そこにはポストシーズンをにらんだ新しい考え方がある。昔は移籍、トレードはオフのストーブリーグに行われるもので、シーズン中は動かなかった。春先に編成されたロースターで1年やり切るのだ。1年、同じ釜の飯を食う。ダメなら次の年あらためてやり直し。
 
 いつの頃からかそれがシーズン中も珍しくなくなった。緊急補強のニュアンスだ。レギュラー二塁手がケガで使えなくなったりしたケースで、代役になり得る内野手を補強する。中継ぎ投手が春先から総崩れといった事態に、実績あるリリーバーを補強する。人事の手当てだ。今は「オフの大型トレード」よりもこっちのほうが活発かもしれない。
 
 で、そこにファイターズが谷元を売りに出したような「後半戦&ポストシーズンをにらんだブースト移籍」というパターンが加わったのだと思う。ファイターズは絶望的だが、中日はまだCSの可能性を残している。中日は勝負できる人材が欲しい。CS制が定着して、そこに需要が生まれたのだ。ドジャースが期限ぎりぎりでダルビッシュを獲得したのと同じだ。二段ロケット点火。何か「都市対抗の補強選手」にもちょっと感じが似ている。新しい動きだ。CSをあきらめたチームからCSのかかったチームへ余剰戦力が動く(メンドーサの場合はトレード期限が過ぎてからのことで、金銭的補償こそないけれど、パターンとしては似ている)。
 
 以上はファイターズのビジネス感覚を説明してみたらこんなじゃないか、という話だ。僕はここまでの文章で「片道キップ」とか「谷元を売りに出した」とか書くだけで、もうジワッと泣けてきている。メンドーサは8月18日の西武戦で久々に好投(7回1/3、被安打4、失点0)して、今季3勝目(3勝7敗)を挙げたのだ。ヒーローインタビューのお立ち台に、愛息マルセロ君を抱いて立つ姿を見たのはつい1週間前だ。あれはさよなら登板だったのか。メンドーサはすべてをわかった上で札幌ドームのマウンドに立ったのか。だとしたら悲しすぎる。ていうか、メンドーサいい人すぎる。噂によると登板翌日にはもう、チームメイトのところをまわって別れの挨拶をしていたそうだ。

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