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元木大介、ドラフト1位の肖像#2――巨人逆指名批判、ホークス入団拒否の理由

かつて「ドラフト1位」でプロに入団した選手1人の野球人生をクローズアップする。華やかな世界として脚光を浴びる一方で、現役生活では「ドラフト1位」という肩書に苦悩し、厳しさも味わった。その選手にとって、果たしてプロ野球という世界はどのようなものだったのだろうか。

2017/10/11

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「俺、ジャイアンツでやりたいです」発言の真意

 1989年秋――。
 
 ドラフト会議が近づき、新聞などで元木の名前は〈ドラフト1位候補〉として取り上げられるようになった。
 
 しかし、元木は他人事のように感じていた。兄が「お前がドラフト1位ってどうなんや」と茶化すと、元木は「俺もわかんねぇ」ととぼけた。本当に自分がプロ野球選手になれるのか、半信半疑だったのだ。
 
「プロに行けると思っていなかったのは本音。プロってすげぇ世界だって思っているから。あのマスコットバットでバンバン、フェンス越えしている人の記憶があった。見る目ないな、自分よりももっとすごい奴いっぱいいるのにって」
 
 もちろん高校卒業後も野球を辞める気はなかった。社会人、もしくは大学に進学する心づもりだった。
 
「大学も(野球推薦で)どっかいいところ行けたらいいなとか、思っていた」
 
 そんな元木が自分の進路としっかり向き合ったのは、野球部に退部届を出し、プロ野球に進む意思をはっきりとさせてからのことだ。
 
「退部届出せって言われて、俺、もう退部するの? 野球部じゃなくなるの? 俺だけ辞めるのって感覚」
 
 元木によると12球団全てのスカウトが会いに来たという。
 
「授業中に、おいって呼ばれて、理事長室に入ったら、スカウトの人がいた。もしよければ、みたいな感じで1位指名させて頂きたいんですけれどって言われた。終わってから教室で、おーいってみんなを集めて名刺を見せるのも楽しかった。みんなが、どこ(の球団)、どこって(訊ねてくるので)、これ見てみって。もちろん、全部の球団が1位ではなかったですけれど。正直、(各球団の)熱意みたいなものは分かった。近鉄(バファローズ)は早かったですけれど、とりあえず挨拶に来た、あれ、もう帰るの、みたいな感じ。ジャイアンツも早くから来てくれた。ジャイアンツの人とは長く喋って、なんとか欲しいんで1位指名しますって言われた。こっちは、めっちゃ嬉しいわと思いながら、ありがとうございますって」
 
 元木の心が固まったのは、この読売ジャイアンツのスカウトと会ってからのことだった。
 
「監督から“どうする”って聞かれて、“俺、ジャイアンツでやりたいです”って。そうしたら“そうか、分かった”と。それで記者会見でジャイアンツに入りたいですって言ったら、逆指名、いいのかって書かれて。怖っ、て思ったね。好きな球団、入りたい球団って聞かれたから、ジャイアンツですって答えただけ。そうしたら巨人逆指名、みたいな」
 
 元木の進路に対する報道が過熱したため、10月2日に記者会見を開いたのだ。
  
〈「ぼく自身は巨人一本に決めてます」
――それはずっと前からそう考えていたんですか?
「はい、小さい頃から巨人に入って野球をしたいと思っていました」
――巨人以外の11球団についてはどんな風にお考えですか?
「もし指名された場合は、自分なりに行かないことを決めてます」〉
 
 元木は言葉を選んで慎重に受け答えしている。自分の意思は明らかにするが、他球団を刺激したくない。そんな会見だった。しかし、残念ながら元木の配慮は通じなかった。ジャイアンツ逆指名と書かれ、密約があるのではないかと、疑われることになった。

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