飯山裕志が積み重ねた圧倒的努力。「万年2軍の選手」からファンに愛される選手へ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#61】
ファイターズ一筋20年、飯山裕志が今季限りでユニフォームを脱ぐ。入団当時、プロ野球選手としては物足りない印象を受けたが、今や大勢のファイターズファンに惜しまれる存在となった。
2017/10/08
気持ちのこもった27個目のアウト
さて、飯山裕志の引退試合だ。スタメンを辞退して8回から守備に入った。ファイターズは奮起した。10対3と大量リードだ。栗山英樹監督は起用がラクになった。何と「ショート飯山裕志、セカンド田中賢介」を組んだ。これは鎌ケ谷で始まったコンビだ。栗山さんが球審に交代を告げると、飯山が全力疾走で飛び出していく。場内から温かい拍手が起こる。「一筋に守り抜いた20年間 ありがとう飯山裕志」の断幕。「頼れる男 飯山選手 ありがとう」のボード。
オリックスの最初の打者が小谷野栄一だった。三遊間を抜けるヒットで出塁。一瞬、紅白戦を見ているような錯覚に陥った。だけど、あの頃に時計は戻らない。それを足がかりにマレーロと武田健吾がタイムリーを放ち、スコアは10対5になる。だけど、野球の神様はいるんだよ。宗佑磨のセカンドゴロが4-6-3のダブルプレーになる。飯山&賢介のゲッツーが見れた。賢介のバックトス、ジャストのタイミングで2塁に入る飯山、そして堅実なスローイング。最高にしびれた。
8回裏は打席がまわった。賢介がツーベースで出て1死2塁だ。応援歌がスタンドを包む。裕志裕志 かっとばせ裕志 ララララララララ かっとばせ裕志! 明るい曲調だ。青空と入道雲のようだ。が、打球は浅いレフトフライだった。3万5千強が「あぁ~」と声に出した。もちろん僕もそのひとり。
9回表は玉井大翔がトントン片づけた。2死走者なしで迎えた大城滉二の打席、キャッチャー大野奨太はシュートを要求する。ショートゴロを打たせたかった。大城は初球を叩き、ベース寄りのゴロになった。飯山は軽快にさばき、中田翔のミットめがけ気持ちのこもった送球だ。最高だ。飯山で締めた。最後は思いがあふれて大変だったろうが、ゴロに身体が反応していた。練習は裏切らない。飯山裕志は最後までそれを示した。ありがとう&おつかれ様でした。僕は立ち上がって拍手をした。
「飯山裕志はプロ野球選手を辞めます。しかし、野球という素晴らしいスポーツは一生辞めることはないと思います」(引退スピーチより)
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