佐々木千隼、ドライチの期待に応えられなかった苦悩の1年――宮崎で誓う2年目の飛躍【マリーンズ浦和ファーム通信#42】
昨年のドラフト会議で注目を集めた佐々木千隼。1年目から即戦力として期待されたが、思うような結果を残せなかった。今、フェニックスリーグで自分磨きの日々を送っている。
2017/10/16
千葉ロッテマリーンズ
力強いボールが投げられなかった
昨秋のドラフト会議で5球団競合の末、マリーンズ入りをした男は10月、宮崎で行われているフェニックスリーグにいた。10月14日、天福球場で行われたカープ戦。マリーンズの佐々木千隼投手はクライマックスシリーズに向けた調整登板のため先発をした大瀬良大地投手と投げ合った。8回を投げて被安打4、無失点。テンポのいい見事な投球だった。
「フェニックスリーグは結果ではなくて、自分の思っているテーマに沿ってちゃんとやれているかということだと思うので、そういう意味ではきょうの投球は全然ですね。この期間にしっかりと下半身を使った投球をして力強いボールを投げれるように意識しています」
プロ1年目の今季、キャンプからシーズン終了まで、自分自身の中で納得いく投球を投げることなく終わった男は、まだどこか不満のようだった。「思ったような力強いボールを投げることが出来ない」。それはこの1年、ずっと言い続けて悩んでいること。投げ込みをしたり、遠投を増やしたり、ウエイトトレーニングに積極的に取り組むなど試行錯誤を繰り返してきた。それでも未だ、理想のボールを身に着けることは出来ていない。各球団が若手選手たちを中心に練習試合を繰り返すこのフェニックスリーグで1年の最後にキッカケを掴もうと、もがく姿があった。
「今年はちょっと色々と気にし過ぎた部分はあったと思っています。もちろん考えたりするのは大事だけど、悩みすぎるのもどうかなと。しっかりと切り替えをしながら、シンプルに物事を考えて、自分の考えたことに向かって突き進むことの大事さを感じました」
思えば1月の自主トレから注目を一身に浴びていた。高校時代は無名だった選手が、大学3年ぐらいから頭角を現すとドラフト会議では5球団が1位指名をする話題の新人となった。ずっとマスコミの視線を浴びた。行く先々でカメラを向けられ、ブルペンでも野球評論家などが大挙して押し寄せた。これまであまり注目を浴びることなく野球に取り組んできた若者はどこか自分を見失っていた。
「周りの目を気にし過ぎましたね。いろいろな媒体で取り上げていただいて、もっといいボールを投げないといけないとブルペンで力んでしまっていた。色々な人がボクの投球を見ている。こんなボールではダメだと自分を追い込んでいた。そして色々な事がおかしくなっていた」
周囲の視線を感じるうちにいつしか自分のスタイルを見失っていた。それでもプロ初先発した試合でプロ初勝利をするなど今季4勝。期待された数値とは違うかもしれないが、悩みもがいたルーキーイヤーとしてはその潜在能力の高さを証明した1年ともなった。