【日本Sを読み解く】大人と子どもの戦い。勝負を決めた先発の質と初戦への姿勢
日本シリーズ第1戦は、福岡ソフトバンクホークスが横浜DeNAベイスターズに10-1で快勝した。パ・リーグ王者の力を見せつけた初戦。勝敗を分けたポイントはどこにあるのか。
2017/10/29
立ち上がり悪かった両先発
まるで、大人と子どもの戦いだった。
ソフトバンクが先勝。初回から打線が機能して計10得点。投げてもエラーがらみの1失点のみの完勝劇である。
CSの最終戦から復帰した1番・柳田悠岐がいきなり中前安打を放って勢いをつけ、チーム全員が呼応した試合だった。
プレーボール直後はそれほど簡単な試合になるようには思えなかった。両先発がいつものピッチングではなかったからだ。
ソフトバンクの先発・千賀滉大は、ストレートが高めにいって、フォークにいつもの落差がなかった。明らかに力みがあり、ボールが抜けたりもした。3回までに得意のフォークで取った空振りは厳しい判定によるハーフスイング1度。それが何よりの証拠だ。
力んでいたのはDeNAの先発・井納翔一も同じだった。ストレートが抜けたかと思うと、次は引っかかるという悪循環。スライダー、フォークはいつもとは異なる変化を描いていた。
若い千賀、シリーズ初登板の井納にとって「これが日本シリーズ」という大舞台の怖さを知るような立ち上がりだった。
序盤から大人びた振る舞いを見せたのは千賀の方だった。初回は1死から2番・柴田竜拓を四球で歩かせる。3番・ロペスは三邪飛に打ち取って2死となって4番・筒香嘉智を迎えた。
どこのメディアを見ても、「日本シリーズのキーマン」に挙げられる相手主砲との対決に観衆は固唾をのんで見守ったが、千賀は冷静だった。
「試合前から(筒香の)対策は話していたので、その通りに投げればいいと思っていました。結果はフォアボールになりましたけど、攻め方は思い通りだったし、フォアボールでもいいと思って投げた球だったので、問題なかった」と振り返った。
続く宮崎敏郎を三ゴロに仕留めると、悪い立ち上がりを何とか切り抜けた。
対する井納は、先頭の柳田に中前に落とされて出塁を許す。2番・今宮健太への初球は、インコースの抜け球。明らかにおかしい球だ。今宮は慌てず、しっかりバントを成功させると、3番のデスパイネは初球スライダーを見逃しストライクのあと、インコース高めのストレートを強振、先制点となる適時二塁打を放った。
立ち上がりの悪さを乗り切った方と乗り切れなかった方。その流れは2回も続き、試合の潮目は大きく動いた。