【日本Sを読み解く】明暗分けたブルペン采配。“勝負どころの見極め”に生まれたソフトバンクとDeNAの差
日本シリーズ第5戦は、横浜DeNAベイスターズが5-4で福岡ソフトバンクホークスに逆転勝ちした。3連敗からの「奇跡の下克上」へ向けて2連勝。この試合のポイントはどこにあったのか。
2017/11/03
早すぎたモイネロの登板
DeNAが6回を無得点で終えることは、すなわち終戦を意味する。ソフトバンクは先発のバンデンハークと後に控える投手陣でいかに乗り切るかが焦点だった。
しかし、バンデンハークは先頭の桑原将志にスライダーを合わされ、左翼前安打を許してしまう。1死後ロペスに四球を与え、1死1、2塁で4番・筒香を迎えることとなる。
ここでソフトバンクベンチが動いた。勝負どころととらえたのであろう。これまでの勝ちゲームでは7、8回に登板してきたモイネロを早々に登板させた。
ソフトバンクのブルペン陣が強力なのはクローザーのサファテまでに繋ぐ、モイネロと岩嵜翔が7、8回をきっちりと抑えるからだ。この3人が7~9回を担当するのが前提だ。
つまり、6回はそれ以外のブルペン陣、左腕なら嘉弥真新也、右腕なら森唯斗が担当することで鉄壁の3イニングを作り上げてきたのだ。
しかし、工藤監督はここで、モイネロを前倒しした。勝負に出たとも、勝負を急いだともとれる戦略だ。
打者の筒香は、試合の大事な局面で左腕のどちらかが登板してくることは想定済みだった。すでにモイネロとは2度対戦している。
「このシリーズでも打席にたっていますし、どこかいいところでモイネロを投入してくるだろうとイメージしていました。シーズン中やっていない投手なので、難しい所はありますけど、自分なりの感じたこともありますし、打席で修正していくこともあります。(この打席でどうするべきかの)イメージは持っていました」
まさに泰然自若という言葉が似合う主砲はここで大仕事をした。モイネロのチェンジアップを捉えると、打球は左中間フェンスに届く適時二塁打となった。
「感じたままでやってきた技術を無意識で出せるのが一番大事な事だと思っています。対戦数が少ないとタイミングの問題もありますけど、自分で感じたまま無意識に身体が動くように。オフシーズンから取り組んできたことを出すことを考えました。結果的には打てたので、それは良かったのかなと思います」
1点差に迫るタイムリーだが、これは単なる1本ではない。ソフトバンクがモイネロ投入という勝負手を早く打ってきたなかで、それを打ち砕いた。ソフトバンクが守勢に回るのは当然だ。