【日本Sを読み解く】“緻密で繊細”VS“粗削りで攻撃的”、ソフトバンクとDeNAが示した野球のおもしろさ
日本シリーズは第6戦で、福岡ソフトバンクホークスが4-3で横浜DeNAベイスターズに勝利し、2年ぶりにシリーズを制覇した。延長11回の末、ソフトバンクがサヨナラ勝ちを決めた試合のポイントはどこにあるのか。
2017/11/05
経験浅いDeNAを上回ったソフトバンクの粘り
ただ、その中でもソフトバンクが一方的にやられなかったのは、選手たちのプライドだろう。2点差を付けられてからの粘りは、経験の浅いDeNAの選手たちを少しずつ追い詰めていった。
6回、8回に訪れたピンチを無失点に抑えると、じりじりと試合の流れを引き寄せていった。8回裏に長谷川勇也の二塁打から好機をつかみ1点を返し、9回に望みをつないだ。数々の修羅場を乗り越えてきた選手たちは諦めなかった。
そして、9回裏に飛び出た内川聖一の一発。それまでの試合展開、DeNAが主導権を握って進めていた試合をリセットさせる価値のある本塁打は、勝利をぐっと引き寄せたと言える。
「どうにかしないといけない。今日の試合は勝ちに繋げないといけないという気持ちで打席に入った。(山崎投手とは)初めての対戦ではなかったので、気持ち的に余裕はありました。一番いいところで1本出てくれた。みんなで何とかしようという気持ちが僕のバットに乗りうつってくれたと思います」
内川は殊勲打を振り返った。古巣について多くを語りたがらないが、土壇場の一発には様々な想いがあっただろう。
11回裏、ソフトバンク野手陣が意地を見せた。セーブ王・サファテの3イニング登板の執念に応えて、サヨナラ勝利。選手層の厚さ、本拠地であること、後攻であるという優位性はもちろん、最後はDeNAの本塁への返球が跳ね上がるという幸運がもたらした勝利だった。
野球のゲームというものは結果論でいくらでも議論できるところがある。
例えば、この試合の8回裏のDeNAの守備だ。
1死三塁から柳田を迎えた場面で、マウンドの砂田は投手ゴロに抑えた。三塁走者の城所龍磨が中途半端に飛び出したため、砂田が本塁へ投じればアウトにできたのではないか。これをアウトにして2点差で9回を迎えれば結果も変わったはずだという意見はもっともらしく聞こえる。
しかし、このときにラミレス監督がどのような守備陣形をとっていたかは語られていない。
実は第2戦でも同じ状況があった。7回裏、DeNAの2点リードで1死三塁。マウンドには砂田、打者・柳田を迎えた場面だ。このとき、ラミレス監督は三塁手・宮崎敏郎と遊撃手・倉本を前に出し、セカンドの柴田だけ定位置に守らせる戦術をとった。プルヒッターである柳田の打球を警戒しつつ2点のリードより1点を守るという戦略を選んだ。
しかし、柳田にタイムリーを許した。そして、倉本の失策などでチャンスを拡大され、リプレー検証にもなったあの敗戦につながったのだ。
第6戦の同じ場面、DeNAは前進守備を取っていなかった。つまり、1点差になることは想定内の守り方をしていたのだ。砂田が本塁へ投げていれば同点にはならなかったというのは、9回裏の同点弾を前提に議論をしている。
ここで重要なのは、結果がどう出たかで論じるのではなく、DeNAが試合をいかに進めようとしていたかにある。