DeNAがソフトバンクと互角に渡り合えた理由。“前を向け”選手変えた指揮官の姿勢
福岡ソフトバンクホークスの日本一で幕を閉じた2017年シーズン。日本シリーズは、横浜DeNAベイスターズが圧倒的不利という下馬評を覆し、接戦を演じた。パ・リーグ王者と互角に渡り合えた理由はどこにあるのか。
2017/11/08
選手に求めるポジティブな姿勢
そのポジティブな姿勢は、打席に立つ選手にも求めた。
試合展開によってはボールの見極めが必要なときもある。しかし、DeNAの選手たちはあっさりと打ってしまう。主砲の筒香は選球していくタイプではあるものの、ほとんどの選手が積極的にアプローチしていく。
ラミレス監督はこう語る。
「強いチームは早いカウントでストライクがきたらどんどん振っていくスタイルで成功している。理想は1番の桑原が初球のストライクを積極的に振ってヒットになることだが、ヒットにならなくても、相手に十分なメッセージになる。『俺たちはストライクが来たらどんどん行く』とね。その姿勢は去年以上に浸透しているのは間違いない。今年はそれが良くなっていると思うので、もっと強くなれると思います」
プロでもアマでも取材現場に行くと「積極的に行け」という指導者の声を聞く。しかし、試合だけ積極的に行けと言ったところで、日頃からその環境がないと思い切った打撃ができるわけではない。
失敗を許容する環境があるからこそ、DeNAの打席でのアグレッシブなアプローチが形成される。
セ・リーグの首位打者を獲得し、このシリーズで敢闘賞を受賞した宮崎敏郎が証言する。
「監督と話していると、考え方が変わるというか、前向きになります。毎日、毎日、ポジティブなことを言われることによって、自分でもマイナスなことを言わなくなった。考え方がポジティブになるということが、チームとして浸透している感じなので、後ろ向きにならずに、明日は、明日と思えるようになりました」
アグレッシブなアプローチで思い起こすのが、6月9日のセ・パ交流戦での埼玉西武ライオンズ戦だ。前日の楽天戦で則本昂大に2桁三振を喫したチームは、敵地で西武のエース・菊池雄星と相対した。
2回表に田中浩康が菊池の初球を捉えて左翼スタンドに運ぶ2点本塁打で先制。しかし、その後、逆転を許して9回表を迎えていた。
マウンドは菊池からクローザー増田達至に変わっていたが、先頭の筒香が四球で歩くと、続く宮崎がカウント2-2からの9球目を豪快にフルスイング。左翼スタンドへの逆転本塁打を放り込んだ。
2回以降、菊池に抑えられていたが、DeNA打線にはひるむ様子がなく、最終回にひと仕事をやったのだった。
「則本に三振は喫したけれども、振っていく姿勢は見せられた。今日も同じようなバッティングをみせられれば、エキサイティングなゲームになると思う」
試合前にそう話していたラミレス監督は、試合後も饒舌だった。
「パーフェクトなアプローチだった。(田中は)初球にきたストライクの球を見逃さずに、しっかりと振ってホームランにした、いい打席だった。菊池も、あれだけ思い切り引っ張ってくるとは思っていなかったと思うけど、あの球は失投ではなかった。戦略通り、われわれの理想のアプローチをして結果が出たと思います」
そして、日本シリーズでもその姿勢を失うことはなかった。