【侍J稲葉采配を読み解く】左腕対策のスタメン変更がズバリ的中。打線の組み替えが奏功した台湾戦
野球日本代表「侍ジャパン」は18日、「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」の台湾戦を8-2で勝利し、決勝進出を決めた。先発・今永昇太は6回無失点12奪三振、打線は二桁安打と投打がかみ合った。この試合の稲葉篤紀監督の采配のポイントはどこだったか。
2017/11/19
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先発・今永の好投に応えたジグザグ打線
選手起用に加えて見逃してはならないのが打線の組み合わせだ。1番の京田から8番の田村まで、左、右、左、右と“ジグザグ打線”を組んでいたことだ。
ジグザグ打線を組む意味は、左右の偏りが生まれないこと。そして、相手投手の継投を難しくさせるということだ。
事実、台湾代表の洪一中監督は「左打者、右打者と打線が並んでいたことは、ピッチャーにとって難しかったと思います。チャレンジだった。我々は混乱した」と振り返っている。
左投手を先発させたのは、京田や近藤健介(日本ハム)、上林誠知(ソフトバンク)を意識してのことだろうが、そこに右打者を挟んだことが功を奏した。
5回表の2点追加の場面は、1死三塁から中村を歩かせて京田と勝負した。2番が松本ではなく、当初予定していた西川であったら、相手投手陣は左2人のどちらかで抑えればいい。しかし、次の打者が右の松本であるため、安易な攻めができなかった。
その真逆となったのが7回表だ。西川が出塁して、田村、中村と右打者が2人続くところで、右投手を投入。田村の犠打のあと、中村が粘って四球。1死一二塁から京田を警戒し過ぎて四球(満塁)となった。そこでまた投手をスイッチしたが、これを松本が捉えたというわけである。
もともとは西川を2番、9番に源田壮亮(西武)と考えていたそうたが、相手の先発投手を見て、打順の並びを替えた稲葉監督の機転は見事というほかない。
稲葉監督は誇らしげにこう振り返っている。
「今日のポイントは、まずジグザク打線にしたこと。そうすることで、ピッチャーは、投げにくかったでしょうし、今日は機動力が使えないと思っていたので、2番に松本を入れて送っていく野球を左投手がマウンドを降りるまではやっていこうと打順を決めた。8割くらいはやりたい野球ができたと思います」
当然、この打線が奏功した背景には先発した今永の好投に尽きる。6回を投げて3安打無失点、12奪三振の見事なピッチングだった。「台湾の打線も良いと思ったけど、投手にタイミングを合わせることが難しかった」と台湾の洪監督は白旗を上げるしかなかった。
この起用についても、「台湾のクリーンアップの左打者が脅威だったので、ここに今永を当てたほうがいいと思った」と満を持して先発させたというから、指揮官の狙いは完璧に的中した。
ここまでの2戦を振り返ると、韓国戦は継投がばっちりとはまり、台湾戦では打線の組み替えが成功した。稲葉監督の采配を見て感じるのは、かつての代表チームにはない順応性を見せているところだ。これは一言で「経験」が生きているといえるだろう
「国を背負って戦う東京五輪という大舞台での頂点を目標に据えた場合、国際大会の経験は大変重要と考えました。短期決戦に向けたチームの作り方、戦い方を熟知されており、小久保前監督が培った常設侍ジャパンを継続、発展させて、金メダルにつなげてもらえると考えています」
稲葉監督の就任会見の際、侍ジャパン強化委員会の井原敦委員長はそう語っていた。稲葉監督の選手として、コーチとしての経験が存分に生かされている。