契約更改の裏側。1人の選手に球団は複数人…鍵握る交渉能力の有無。定着進まぬ代理人制度【小宮山悟の眼】
ストーブリーグではフリーエージェント(FA)移籍など選手の去就が注目されるが、もうひとつ契約更改という選手にとって重要な時期でもある。私は現役時代、球団との交渉についてメディアに取り上げられることが多かった。今回は私の経験を交えながら、契約交渉について話したい。
2017/11/24
選手だけでは簡単でない契約交渉
契約交渉の場では、選手一人に対して球団側は複数人が席について対応する。高校や大学を卒業したばかりの若い選手の場合、交渉は簡単ではないのが実情だ。交渉能力のあるなしは、選手自身がそれまでの経験や蓄積した知識によって差が出るだろう。
年俸に関する交渉で最も重要なことは、翌年の年俸を決めるための基準を設けることだ。ルーキーの場合、同じ年齢の選手はどの程度の年俸を得ているのか、もしくは自分と同等の成績の選手はどの程度なのか。判断基準をもって交渉に臨む必要があると思う。
私の場合、入団前も含めて球団に自分の意見を伝えるようにしていた。入団時の交渉はおおよそ担当スカウトが行うが、その際に1軍の最低保障年俸を要求した。その頃の最低保障年俸は840万円だったと思うが、当時はロッテの中でも限られた選手に対する金額だったので、ルーキーの主張は一つの事件でもあっただろう。
しかし、私は契約金がアマチュア選手に対する評価だとしたら、年俸は来季への期待値を表すものだと考える。当時、球団側は私に対して「即戦力として1年間頑張ってもらわなければならない」と言っていた。その対価を求めるのは正論ではないか。
1年目のオフの契約更改も同様だった。少しでも年俸を抑えたい球団側にすると、「1年しか働いていないのに」という認識のため、球団の意見を引き出しながら、自分の考えをすり合わせていくという交渉をしていた。
また、球団は個人の成績ではなく、チーム成績を交渉過程で引き合いに出すケースもある。「チームの成績が伴わないから年俸は増額できない」という考え方だが、チーム成績と個人の試合の貢献度は別物だろう。
想定よりも提示額が低いから納得しないということではない。ここで重要になってくるのは、球団側は交渉において選手にどんな言葉をかけるか。単に「成績が悪いから」という理由ではなく、「チームの戦力を補強するから今は我慢してくれ」という姿勢を示すことで、選手は納得できるものだ。