人的補償が生む”犠牲”、自由に移籍できぬFAの打開策は?【小宮山悟の眼】
国内のフリーエージェント(FA)移籍が落ち着いてきた。北海道日本ハムファイターズが中日ドラゴンズに移籍した大野翔太の補償について、どのような選択をするのかがまだ決まっていないが、改めて今年のFA戦線を振り返ってみたい。
2017/12/31
人的補償によって生じる選手の心のわだかまり
今年は、日本ハムの増井浩俊がオリックス・バファローズ、埼玉西武ライオンズの野上亮磨が読売ジャイアンツ、阪神タイガースの大和が横浜DeNAベイスターズ、福岡ソフトバンクホークスの鶴岡慎也が日本ハム、日本ハムの大野が中日に移籍した。そして、人的補償として、阪神がルーキー尾仲祐哉、西武は高木勇人を獲得した。
日本のFA制度はMLBとは異なり、権利を行使しない限り活用されない。そのため市場に選手が出回らず、FA戦線と言っても大幅な動きは少ない。
また、人的補償制度は選手たちの権利を阻害していると言えるだろう。FA権の行使によって、球団が育てた選手が他球団に移籍してしまうのはチームとして痛手を被る。それでは不公平なるので、選手を失ったことに対する補償としてできた制度だと思う。
しかし、この制度によって、FAの権利を取得した選手は気持ちよく移籍したはずなのに、代わりにその“犠牲”になった選手がいるというわだかまりを残してプレーする辛さがある。
今回のFA移籍で見ると、巨人・高木のファンは野上を快くは受け入れないかもしれない。せっかく登録日数をクリアしてFA資格を得て移籍したのに、人的補償で人が移るために心の中に何かを抱えながらプレーしなくてはならないのだ。
人的補償として移籍した選手も辛い。人的補償はプロテクトから外された選手が引き抜かれる。つまり、プロテクトされていない場合は“戦力と思われていない”ということになる。MLBのようにトレードが当たり前の文化なら、若手は移籍がチャンスだと思って飛びつくが、日本は移籍自体が後ろ向きにとらえられている。だからこそ、人的補償で移籍した選手は“捨てられた”という気持ちでプレーする場合もある。
“フリーエージェント”として自由に移籍できる権利にも関わらず、実情はそうなっていない妙な制度だろう。