日米球界におけるキャンプの違いは? 若手が経験得るMLB、抜擢狙うプロ野球【小宮山悟の眼】
春季キャンプの1、2軍のメンバー振りわけが始まった。今回はルーキーや若手選手のキャンプ参加について、日米間の違いを話したいと思う。
2018/01/23
キャンプで得る経験、明確な目標を定めるには
私がMLBにいたとき、監督とGMが最初のあいさつでそのことをはっきりといっていた。「ここにいる選手のうち、開幕メジャーにいる選手の方が少ない。何日間、メジャーキャンプにいられるか分からないけど、雰囲気を楽しんでくれ」と。
招待された選手たちはマイナーリーガーでも1週間のメジャーキャンプに参加できただけで、スーパースターと一緒の時間を共有できる。さらにはお客さんがいる中でプレーできる経験を味わえる。そのため、選手たちは貴重な時間を得ていこうという高い意識だった。
日本の野球だと枠の制限がない分、ルーキーでも開幕スタメンに抜擢ということがあるので、多くの選手が目指してしまう。MLBではそれがないので、その分貴重な経験を得る機会として、一歩引いたような雰囲気の中でやっている。
前回のコラムでも書いたが、支配下全員で合同自主トレをやっていた時は意味があった。いやらしい言い方になるが、選手全員が揃うため、自分の立ち位置を判断できた。たとえば、「俺はこのチームのピッチングスタッフの中で、上から数えて何番目だろう」と。それがイメージできてくると、自分が何をしなければいけないのかが見えてくるのだ。誰を抜かなければいけないのかという、明らかな目標ができる。
プロ野球選手である以上は試合に出てこそ価値が出る。そのためには、誰を抜けばいいのか。ターゲットとした人と比較して、何が足らないかが分かれば、その人を追い越すための日々の練習の材料になる。これは意外に大事なことだと思う。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。