垣間見た稲葉Jの“色”。その存在意義とは? 本番は東京五輪、勝利以上に必要なこと【小宮山悟の眼】
「ENEOS侍ジャパンシリーズ2018」に出場する野球日本代表「侍ジャパン」のメンバーが発表された。今回のオーストラリアとの強化試合は、稲葉篤紀監督が初めて指揮するフル代表戦となる。代表チームの意義やメンバーについて考えたい。
2018/03/02
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メンバー選考で垣間見た稲葉ジャパンの“色”
野球は東京五輪で正式種目として復活するため、存在意義を示していかなければならないし、日本はよりよいチームづくりをすることがマストになる。かつてワールドベースボールクラシック(WBC)では中日・落合博満監督が選手を出さないと言って物議を醸したこともあったが、12球団全てが協力しあっていかなければならない。
選手選考に関して日本の野球ファン全員が納得するのは無理だ。不平不満はついて回るものだが、各球団が全力でバックアップできるような代表になってもらいたい。
当然、今回はWBCの翌年なので、そこまでの真剣味がないものかもしれない。そのため選手たちのモチベーションによってマイナスが生じないかという危惧もあるが、「勝つためにどうするべきか」より、稲葉監督が目指すのはどういう野球なのかを示してほしい。選手たちが理解することはもちろん、見ている側にも分かるような試合にしてもらいたいと思う。試合運びを含め、稲葉監督が目指す野球の方向性に注目したい。
今回のメンバーは、東北楽天ゴールデンイーグルス・高梨雄平投手の選出は興味深い。勝負所で主軸の左を抑えにいくには、変則的な投手が不可欠だ。各国の左打者を抑えるには高梨のようなスペシャリスト枠を設ける必要がある。これは現役時代に左バッターだった稲葉監督の経験が生きた選出だろう。稲葉ジャパンの一つの“色”とも言える。
とにかく本番の東京五輪でどう勝つかが重要なのだ。それまでは侍ジャパンの存在が国内で定着していくことを含め、勝ち負けを抜きにして侍ジャパンを見ていくことが大事だ。
侍ジャパンを見た人が「国を代表している選手たちだ」という見方をしてくれるとみんな注目するし、盛り上がるだろう。開催前の注目度が低かった平昌五輪は、大会が始まると国民の多くが必死に応援した。私もスピードスケートのパシュートで日本人選手が1周回るたびに叫んだりしたものだ。やはり日の丸の存在は大きい。侍ジャパンもそういう存在になってほしい。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。