多田野数人らしい引退セレモニー。「思うようにならなかった球歴」こそ大きな財産【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#71】
北海道が荒天の日、多田野数人の引退セレモニーが行われた。日米での野球経験を生かして第2の人生を古巣・ファイターズで歩み出す。
2018/03/12
荒天での引退セレモニー
ちょっと前のことになるのだが、書き残しておきたいから書く。多田野数人の引退セレモニーだ。僕はこの日、台湾ラミゴ・モンキーズとの親善試合で生涯初、ナイター解説者の大役を仰せつかり、HBCラジオの実況席にいた。これまで経験したのはプロOBの野球評論家がちゃんといて、そこに「ゲスト解説」として加わる形ばかりだ。試合前から緊張していた。たぶん台湾・桃園国際棒球場にラミゴを見に行ったりしたフットワークの軽さが買われ、声をかけてもらったと思う。
だから多田野の引退セレモニーに居合わせたのは偶然の産物だ。3月1日、列島は荒天に見舞われた。午前中は関東が大荒れで、飛行機が欠航。午後は飛び立つことはできても、今度は北海道が吹雪で降りられない。僕は午前便で札幌入りの予定を急きょ組み替えて、前日入りして事なきを得たのだった。放送の仕事は本人がいないとどうしょうもない。逆に言うと、放送の仕事がなかったら、あんな大変な思いをして札幌ドームへ向かうことはなかっただろう。こういうのは縁だ。僕はスタジアムで多田野を見送る幸運に恵まれた。
ていうか「スタジアムで多田野を見送る」機会を得たのは、およそ1万人強のファンだけだった。プロ野球のオープン戦ではなく外国チームとの対戦だったこともある。もちろん悪天候も要因だ。北海道各地で道路の通行止めが相次いだ。事故も多発した。僕はその日、札幌・大通の街なかで路線バスと乗用車の衝突を目撃した。多田野の引退セレモニーは発表後、話題になっていたからあんな天候でなければもっと多くのファンが駆けつけたんじゃないか。僕は多田野らしいなぁとちょっと思った。