「お前ら悔しくないのか!」。今の選手、監督にも怒り…江本孟紀氏が語る人間・星野仙一
野球評論家の江本孟紀氏は、2018年1月4日すい臓がんのため70歳で亡くなった星野仙一氏と長年にわたって交流があった。選手を叱咤激励し続けた星野氏について旧知の江本氏にはどのように映ったのか。3月22日に『僕しか知らない星野仙一』を上梓した江本氏が客観的に分析する。
2018/03/20
両親の次に長い付き合いだった星野さん
「星野さんが亡くなられたと聞いたとき、本当に驚きました。実は僕も昨年、ガンを患って治療していたのですが、星野さんは僕の病状のことを、あるルートから聞いて知っていたんです。
『お互い何かしらの病気を持っているから、健康には気をつけていきましょう』と、昨年11月に開かれた星野さんの野球殿堂入りの記念パーティーで話していたのですが……」
開口一番、江本氏はそう語った。江本氏も昨年6月に胃ガンの手術をした後、体重が20キロも落ちたという。
だが、その後は順調に回復し、まもなく開幕するプロ野球の解説も、例年通り元気にこなせるそうだ。
一方で、春季キャンプ、オープン戦を取材で回るうちに、星野さんの姿がないことに寂しさを覚えたという。
「球場に行くと、いつもグラウンド内のどこかにいたはずの人が、あちこち見渡してもいないんです。そのことに気づいたとき、『ああ、星野さんは本当にいなくなってしまったんだな』と、なんだか心にポッカリ穴が開いたような気分でした。
星野さんにグラウンド上で見つかると、『おい、エモッ!』と威勢のいい調子で呼ばれるのが、正直うっとうしいと感じるときもなくはなかったんですが(笑)、星野さんと僕は東京六大学の1つ上の先輩・後輩の間柄でしたからね。何があっても、『はい、センパイ!』と笑顔で応対したのを、昨日のことのように思い出します」
江本氏にとって星野仙一とはどんな人だったのか。
「僕は大学1年のときから知っていますからね。僕の両親が、僕が還暦を過ぎたあたりで亡くなっているわけですから、親の次に長い付き合いだと言っても過言ではない。
学生時代は、ユニフォームを着ているときは、激しいヤジを飛ばしていましたが、学生服を着た途端に、品行方正な大学生になるので、そのギャップには驚かされました。
実際、審判の間でも、『星野君はユニフォームを着ているときと脱いだときの差が激しい。あんなに変わる生徒も珍しいもんだね』と話しているのを、僕は大学時代に実際に聞いたことがありました。
プロでの現役時代、そして引退後は星野さんはユニフォームを着て、僕はバックネット裏から解説をやっていましたが、『燃える男』のイメージは何があっても崩さなかったことは『すごい』のひとことに尽きます。自分はファンからどう見られているか、あるいはどう振舞えばいいのか、常に計算して『闘将・星野仙一』を演じていたように思います」