今宮”奇跡の生還”に驚愕の事実? 「走塁の数値化」で見えてくる驚異のプレー【新装版・野球新書】
試合の勝敗、投手の球速、野手の打率、盗塁数…プロ野球を観戦する際に注目するポイントはいくつもある。この連載では、野球観戦力が高まる情報を伝えるとともに、“プロフェッショナル”とは何かを考えていく。
2018/04/02
盗塁の攻防も可視化できる
試合後、今宮はこんな話をしている。
「僕はいつも守備の時にボールとバットが当たるインパクトの瞬間を大事にしています。インパクトの瞬間にスタートを切ることに関しては人一倍、力を入れてきたので、それがきょうの走塁に生きたと思います」
周知のように、今宮の守備範囲は12球団トップクラス。その秘けつが一歩目のスタートだということであれば、驚異的な走塁が生まれた理由も納得がいく。もちろん、本塁への突入が頭からだったこともセーフの要因だが、このように数値にしていくことでプレーを可視化できる。
このように数字で可視化できるプレーはほかにもある。盗塁を巡る攻防もその一つだ。
盗塁において重要視されるのが捕手の二塁送球だが、多くのプロ野球選手がどれくらいのタイムで投げているのかはあまり語られていない。また、盗塁は捕手のスローイングだけでなく、投手のクイックも関係していることを忘れてはならない。
西川遥輝(日本ハム)、荻野貴司、外崎修汰(西武)ら、昨季の盗塁成功率トップ3にその秘けつを聞くと、「投手のクイック」と言うほどだ。
さらに3人が共通して警戒する捕手がいる。ソフトバンクの甲斐拓也だ。
捕手のスローイングのデッドラインが「2秒」だというのは今は昔。プロの捕手で2秒切るのは当たり前だ。しかし、1.80秒を切る選手は多くはなく、筆者の集計では甲斐、田村龍弘(ロッテ)、小林誠司(巨人)くらいしかいない。
投手のクイックタイムでいうと、カウントによってムラが出るケースがほとんどだが、1.1秒台をアベレージで出すとなると、先発では東浜巨(ソフトバンク)、クローザーでは今季からメジャーに舞台を移した平野佳寿(ダイヤモンドバックス)がいる。
こうして可視化すると、野球の魅力はいくつも見えてくる。もっとも野球のだいご味は数値だけではない。投手の配球、ポジショニング、指揮官の戦術や打順論、投手の起用法など様々な角度から野球の面白さを感じられるのだ。
文:氏原英明