黒田博樹、真の実力はベールに包んだまま――縦の変化を封印し、横の変化で勝負に挑んだ圧巻の96球
8年ぶりに古巣に復帰した黒田博樹の公式戦初戦。強打のヤクルトを7回5安打に封じ込み、日本では07年9月27日のヤクルト戦以来、実に2740日ぶりの勝利となった。この試合、黒田は横の変化で勝負に挑んだ。
2015/03/30
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指揮官さえも重圧を感じた特別な一戦
背番号15が広島に帰ってきた。8年ぶりに古巣・広島に復帰した黒田博樹投手が29日、開幕3戦目のヤクルト戦に先発。本拠地マツダスタジアムを真っ赤に染めた3万1540人のファンの前で、凱旋登板を白星で飾った。
「広島のマウンドは最高でした。これだけたくさんの声援を受けてマウンドに上がって、そしていい結果が出て、ホッとしています」
7回を5安打無失点、ヤクルト打線を封じる
試合後のヒーローインタビュー。日本での勝利の味も、このお立ち台からの風景も、07年9月27日のヤクルト戦以来、実に2740日ぶり。日米通算183個目の白星でも、特別な1勝となったのは違いない。
ドジャース、パドレスなど、20億円強ともされる高額オファーを蹴って、年俸4億円強の古巣に復帰した。男気あふれる広島愛に世間の注目も高まり、その重圧たるや想像に難くない。
それでも黒田は試合後、こう振り返った。
「今までプレッシャーのないマウンドは経験したことない。常にプレッシャーを感じて登板しているので」
メジャー挑戦後から「この一球で野球人生が終わっても悔いがないように、という思いで投げている」と繰り返してきた。その言葉通り、注目の一戦でも信条の全力投球、一球入魂は揺るぎなかった。
現役時代に共にプレーしていた緒方孝一市監督は「絶対勝たないといけない試合だった。黒田がどれだけの重圧を背負って投げていたか。自分も含めてわかっていたつもりだったんだが」と漏らした。5回まで援護できず、結果2-1のギリギリの展開とさせてしまった打線や、自身を含めたベンチワークを責めるようだった。そして指揮官さえも、特別な一戦に重圧を感じ、安どのため息を吐いた。
7回を5安打無失点。強打のヤクルト打線をほぼ完璧に封じ込めた。圧巻の96球は、メジャーで培った「KURODA」の進化をまざまざと見せつけるものだった。