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菊池と則本の投げ合いに見たエースの矜持。試合を支配する「三振の力」【新装版・野球新書】

試合の勝敗、投手の球速、野手の打率、盗塁数…プロ野球を観戦する際に注目するポイントはいくつもある。今回は4月13日の東北楽天ゴールデンイーグルス-埼玉西武ライオンズ戦において、試合の流れを左右した両チーム・エースの「三振の力」について考える。

2018/04/17

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菊池を飲み込んだ則本の投球

 6回裏、則本のピッチングにおされた菊池は、慎重な投球に変わった。先頭のウィーラーにしぶとい右翼前安打で出塁を許すと、銀次に四球を与えて無死一、二塁。藤田一也は遊ゴロだったが、エンドランを仕掛けていたため1死二、三塁となり、7番・今江年晶が右翼前に落として2点を返された。
 
 6回を終え、その差は1点。前半までの展開は一転し、接戦へと推移した。6回表の則本のピッチングが流れを変え、菊池が飲み込まれた。
 
 菊池が則本との投げ合いについてこう語っていた。
  
 「どれだけ点差が離れていても、則本さんは隙を見せるとギアを上げてくるんですよ。それで流れを変えてくる。だから息が抜けないんです」
 
 正直に言って、この日の則本の調子は最悪だった。ストレートは外に抜け、変化球の指のかかりも悪かった。試合の展開を見極めて投球するというレベルにないほど苦心していた。だが、それでも「ここ」というところをかぎ分けてギアチェンジしてきたところは「さすがのエース」とうならざるを得ない。
 
 菊池は息を抜いたわけではなかったが、則本の投球をリスペクトしすぎたと言えるだろう。
 
 試合は9回表に西武・森が適時打を放って、貴重な追加点を挙げて決着した。西武が7-5で楽天を下した試合だった。両エースが崩れた展開から互いにギアチェンジをしあって熱戦を演じた投げ合いは目を見張るものがあった。
 
 エースを務めるほどの投手は試合展開の中で流れを変える術を知っている。
 
 この日は最初に菊池が空気を支配して流れをチームに引き寄せようとした。則本は菊池の後手に回ったが、それでも粘り強く投げて6回に圧巻のピッチングを見せて、菊池に無言のプレッシャーを与えた。終盤にいつ試合がひっくり返るかわからないと思わせた。
 
 2人の投げ合いはこれからも続く。ローテーションがこのままなら、4月28日に早くも再戦がある。さらに翌週にも両チームが対戦することになっていて、投げ合いが続く可能性もある。
 
 エースたちの矜持――。ギアを使い分けて試合を支配しようとする投げ合いから目が離せない。
 
 
氏原英明

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