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「ピンチなのに、やべ、楽しい!」初の開幕投手・牧田和久が投手人生で初めて抱いた感覚【中島大輔 One~この1イニングをクローズアップ】

ある試合の象徴的なワンシーンを切り抜き、その場面の選手の心理や想いを取り上げる連載企画。2015年シーズンが始まり、こちらも再開となる。2015年第1回目は、埼玉西武ライオンズの牧田和久だ。3月27日金曜日の開幕戦、埼玉西武ライオンズ対オリックス・バファローズの6回表の場面をクローズアップする。

2015/03/31

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ベースボールチャンネル編集部



6回表のピンチの場面、ブランコとT-岡田に対峙した牧田の心理は?

 ここで捕手の炭谷銀仁朗はマウンドに足を運び、牧田と狙いを確認する。
「1塁が空いていたから、ブランコ、T(岡田)、小谷野さんまで考えていこうと話しました。詰まって浅いフライか、三振を狙っていましたね」
 
 ひと呼吸置いた牧田には、冒頭で述べたように「楽しい」という気持ちが芽生えてきた。極限状態のピンチで、なぜポジティブな心理状態になれたのだろうか。
 
「『抑えなきゃ、抑えなきゃ。打たれたらどうしよう』なんて思うと、結果的に打たれてしまうことが多いので、逆に楽しもう、と。楽しもうというのは言い方がおかしいんですけど、1球1球必死に。今日は本当に集中できていたなと思いますね」
 自らの気持ちをコントロールし、アドレナリンを全開にさせた牧田はブランコの攻略法をこう描いた。
 
「インコースに関しては、高さ関係なしにコースをしっかりと投げる。あとは高めにけっこう反応していたので、そこをうまく外に散らせながらインサイドで勝負、という感じで今日は行きました」
 
 初球から内角にストレートを続けて空振り、ファウルで追い込むと、7球目の内角高めストレートでバットを追ってショートフライ。7球のうち6球をストレートで打ち取った。
 続く打者はT-岡田。最悪歩かせてもいいケースで、牧田は厳しい攻めに出る。
 
「インサイドに甘くなったらダメだ、とだけ思っていました。いつも左バッターにインサイドの真っすぐ、変化球が甘く入って打たれることが多いので。左バッターに対しては、しっかり投げ込もうと思っていました」
 
 初球は外角低めを狙ったスライダーが真ん中に甘く入ったものの、T-岡田が打ち損ねてファウル。2、3球目は内角を突いたストレートがわずかに外れ、4球目はスライダーでタイミングを外してファウルで追い込む。そして5球目、外角低めの厳しいコースにシュートを投げ込むと、ボテボテのゴロが1塁とマウンドの間に転がった。
 
「捕れるかなと思ったんですけど、ちょっと難しいかなって。ファーストに任せようと思ったら、メヒアも『えっ、お前、捕らないの?』みたいな表情で」
 
 結果的にはファーストのメヒアがゴロを捕球し、ベースカバーに入った牧田に投げてアウト。間一髪のプレーでピンチを脱したが、牧田はここでも冷静だった。
 
「最初は捕りに行けるかなと思ったんですけど、オープン戦で見た光景だなと思ったので。DeNA戦で自分が捕って、ランナーにタッチしたけどセーフだったことがあったので。そこでのコンビネーションは難しいところだと思うんですけど、結果的にアウトにできてよかったなと思います」
 
 6回表のピンチを牧田が凌ぐと、その裏、先頭打者の秋山翔吾が2塁打で出塁し、2死からメヒアのライト前タイムリーで先制。結局牧田は7回まで0点に抑え、増田達至、髙橋朋己のリレーで最少リードを守り切った。
 
「今日は自分の100%に近い投球をできたかなと思います」
 
 そう振り返った牧田は、勝因をこう分析した。
 
「開幕だからすごい場所だと思うんですけど、特別そういうふうに思ってしまうと、自分の性格的に窮屈になってしまうので。143試合のなかの1試合と位置付けていたので、それがいい方向に向いたのかなと思います」
 
 ルーキーイヤーから西武のクローザーを務め、13年ワールド・ベースボール・クラシックでは侍ジャパンの守護神として起用された。そうした経験から今季の開幕投手を任された牧田は、見事なメンタルコントロールで田邊監督の期待に応えた。
 
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