ブランド化に成功した「栗山印の栗トンキン」。抑え配置転換の妙【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#76】
すでに「山賊打線」という名前が定着したライオンズ相手に2試合連続零封勝利を収めたファイターズ。少しずつではあるが、ファイターズの形が見えてきている。
2018/05/21
「キモだめし大会」は続く
僕は今回お伝えしたいのは、2試合連続「ゼロ封」の中身の話だ。実際問題、ヒヤヒヤの連続だった。マルティネスが先発した6回戦は、8回まで毎回安打を食らったのだ。いちばん肝を冷やしたのは5回表、1死満塁で3番浅村、4番山川というシーンだった。くどいようだが狭い東京ドームだ。うんうんうなされそうな悪夢だ。それを遊飛、遊ゴロで何とか切り抜けるのだが、浅村がいっぺんファウルフライを打ち上げて、捕球したらドーム天井に当たっていて、(東京ドームのローカルルールにより)打ち直しとなったときは、あぁ、ツキがないと嘆息した。もう打ち直しで浅村にガツンといかれるのが目に浮かぶじゃないか。だけど、この同じシーンについて、後で西武ファンに聞いたら「こっちは打ち直しでダメなのが目に浮かんでました」と言っていた。ファン心理の面白さというものだろう。ありがたいことに西武ファンの想像のほうが当たってくれた(遊飛)。
この試合は石川直、トンキンという「山賊被害投手」が後ろを任されたのもヒヤヒヤした。何かもうキモだめし大会だ。石川直也は開幕シリーズでボコられ、8-0大逆転の試合は最終回ワンアウトも取れずにサヨナラ負けを喫している。出来るなら一生「西武のいない土地」で安穏に暮らさせてやりたいところだが、あいにく仕事がパリーグのピッチャーなのでそういうわけにもいかない。この間、事情が変わったのは、クローザーから8回のセットアッパーに配置転換されたことだ。いつか再びクローザーを任される日も来るかと思うが、今シーズンはここで経験を積めばいい。がんばれ石川直也!
クローザーはトンキンである。トンキンも8-0大逆転の試合はトーン、キーンとやられたのだが、このところだいぶ落ち着いて仕事ができている。2メートルを超える長身だが、去年までいたマーティンと違って、上から角度をつけるのでなくスリークォーターで投げる。ダメな日はトーン、キーンだ。ただ配置転換がハマって以来、栗山監督の信頼も厚く、一種「栗山印の栗トンキン」くらいのブランド化に成功している。このまま「栗トンキン」として定着してほしい。西武6回戦は相手の「12残塁の拙攻」に助けられた試合だが、こちらからするとチームの役割が定まり、その成果が見られた試合だった。
では、上沢直之が133球、4被安打完封(9奪三振)に成功した翌7回戦はどうだったかというと、これも最終回は無死1、2塁で4番山川なんて悪夢のシーンが出来(しゅったい)するキモだめし大会だった。栗山さん「栗トンキン」を繰り出すのかと思ったが、上沢にすべてを託す采配だった。スコアは1-0、たったの1点リードだからあの場面、上沢がやられていたらおじゃんだった。この試合は捕手・清水優心が速球を生かす会心のリードを見せていた。上沢自身は去年ケガから復帰して、一段上のレベルまで到達した記念碑のような完封勝ちだ。これもまた「エース格」という上沢の役割が定まった試合じゃなかったかなと思う。
野球チームは役割が定まったほうが戦いやすいし、安心感がある。ファイターズはそれを少しずつ手に入れてく過程にある。まぁ、そんなこと言っても「山賊打線」と5月最後の連戦が待ってるわけで、またキモだめし大会になるのは間違いない。出来たら「山賊」さんたちには早く交流戦でセの投手を身ぐるみはがすほうに向かってほしい。こっちはドラクエなら「あ、じゃオレ、魔法使いやるわ」「じゃ、オレ戦士」「じゃ、オレ栗キントン」とパーティーの職業を決めたくらいの段階だ。モード選択は「いのちだいじに」である。
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