「無駄なことを考えずにヒットを打つ」獅子の切り込み隊長・秋山翔吾、5年目”長打封印”の理由【中島大輔 One～この1打席をクローズアップ】
ある試合の象徴的なワンシーンを切り抜き、その場面の選手の心理や想いを取り上げる連載企画。今回は、埼玉西武ライオンズの秋山翔吾だ。5年目の今季は打撃フォームを改造し、「長打」を封印したのだ。その成果が最高の形で表れたのが、4月5日に西武プリンスドームで行われたソフトバンク戦の第1打席、中田賢一から放った先頭打者本塁打だった。
2015/04/07
長打は麻薬なところがあるからこそ……
「そうですね。距離はいくかなと思ったんですけど、切れなかったので、いい打ち方をしたんじゃないですかね」
秋山の言うように、少しでもタイミングやボールにコンタクトする角度がズレていたら、あの当たりはファウルになっていただろう。1打席目のファーストストライクで完璧な当たりを放った秋山は、すぐに自分を戒めるかのような言葉を続けた。
「ただ、やっぱり、あの後もう1回修正するというところが必要ですね。どうしても振りが大きくなったりするし、勘違いしやすいので、そこはこれから気をつけたいなと思います」
そう言うと、さらにひと言付け加えた。
「でも、いい打ち方だったんじゃないですかね」
自分でも納得する打撃を見せた後、先頭打者で回ってきた3回の第2打席では8球粘って空振り三振。6球目は内角高めの141kmストレートをレフト方向に強く弾き返したが、惜しくもファウルとなり、7球目は真ん中低めのチェンジアップをファウルでうまく逃げた。8球目に同じコースのフォークで空振り三振を喫したものの、内容のある打席だった。
秋山自身はこの打席をどう解釈しだのだろうか。
「三振にはなりましたけど、2ストライク目まで粘れたし、ファウルの方向もよかったので、そんなに悪い感じではないですね。欲を言えば、（5回の）チャンスで1本。あそこで先に追加点を取っておくと、楽になるので。ヒットを打ちにいっているんですけど、当たりも悪くなかったので。あとは狙い球とか、いろんな面があると思います。でも雑になることがなかったので、自分としては納得している凡退です」
まだ8試合を終えたばかりだが、リーグ7位タイの打率.333。2番から栗山巧、浅村栄斗、中村剛也、エルネスト・メヒア、森友哉が並ぶ強力打線の切り込み隊長役を任され、内容のある打撃をできている自負もある。
「打球が強くなるように、ヘッドを走るように練習してきました。ヘッドを走らせようと思うと、どうしても力みます。だからトスバッティングまではいかないけど、感覚はそれに近いですね。野球を長くやっていると、嫌でもインパクトに力が入ります。だから打つポイントまで、いかにバットを軽く運べるか。当たってからの勝負は本能に任せて、捉えるまでのポイントは軽く、柔らかく」
長打を封印する覚悟は変わらないが、いまの打ち方を貫けば、強い打球が遠くまで飛んでいくことを確認できた。4月5日、ソフトバンク戦で放った先頭打者本塁打は、決意と成果が凝縮された一打だった。
プロ入り5年目の今季、秋山は階段を大きく上ろうとしている。
ベースボールチャンネルのフェイスブックはこちら→
ベースボールチャンネルのツイッターはこちら→