「クローザー有原航平」に期待するアグレッシブな投球。闘争心を取り戻せ!【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#78】
栗山英樹監督が大胆な策に打って出た。今季、先発で結果が出ない有原航平のクローザー起用だ。
2018/06/16
もう1枚強力なリリーフが必要だった
交流戦最大のサプライズは、有原航平のクローザー起用だったのじゃないか。6月13日の阪神戦2回戦だ。前夜、カード初戦を斎藤佑樹で失い、ファイターズは負けられなかった。この日は打線が奮起し、レアードの13号3ラン、石井一の1号ソロ等で大量8点を挙げていた。通常ならそれで決まりだ。あぁ、あの日は打ち勝ったね。以上、話は終わり。
が、ことはそうシンプルでもなかったのだ。上沢直之の先発試合はどういうわけか(彼の降板後に)もつれることが多い。この日は宮西2失点が誤算だった。ボヤを消し止めに石川直也が7回に出て来る。で、8回はトンキンが出てくる。ちょっと札幌ドームがざわついた。見慣れた勝ちパターンの継投より1イニングずつ早い。これは最終回、トンキンの回またぎか。それとも情報が出ている有原の起用か。
それが有原なのだった。9回表、8対5のセーブシチュエーションで16番がマウンドに立つ。栗山英樹監督の大胆用兵だ。今季故障で出遅れ、先発で波に乗れない有原をリリーフで使う。有原がリリーフに立つのは、何とルーキーイヤーの2015年パ・リーグCS第1ステージ以来だ。
僕は面白いなぁと感じ入る。こういう起用法があったか。まず前提には「連戦が続き、リリーフ陣がヘタッてきた交流戦後半」という状況がある。一例を挙げるとトンキンは広島戦1回戦で抑えに失敗、サヨナラ負けを喫した。阪神2回戦の宮西2失点も同じ現象かもしれない。1枚、強力なリリーフが必要なのだ。もう少しで交流戦も終わり、リリーフ陣は休養できる。そこまで1枚、誰かいないかなぁ。
配置転換は一時的か?
欲しいのは強い球を投げられて、三振の取れるピッチャーだ。有原の名前が挙がったのは当然とも言える。思い出すのは吉川光夫(巨人)がファイターズ在籍の最後の一時期、抑えを任されたことだ。吉川も2012年パリーグMVP&最優秀防御率の活躍の後、並の投手になってしまっていた。結果的にそのコンバートは成功せず、短期間でプラン倒れに終わったのだが、あのときも僕は栗山用兵に驚いたものだ。吉川もまさに「強い球を投げられて、三振の取れるピッチャー」だった。
タイプとしては吉川も有原も、大事に扱わなきゃいけない投手だ。打者であれば中田翔に似ている。格をつくってやらないと存在が死んでしまうのだ。今季、チームでエースと呼べる働きをしているのは上沢でありマルティネスだったとしても、有原のプライドは守ってやらなくてはいけない。その点、クローザーならモチベーションも保たれると思う。
たぶんこのコンバートは(少なくとも現時点では)一時的な配置転換だと思う。例えば2016年シーズン、増井浩俊を先発で起用したような荒技じゃないだろう。いや、そんなこと言って、ひょっとしてうまくハマッたらそれもあり得る(まだファイターズは「ポスト増井」の決定的な抑えをつくれていない)かもしれないが、ちょっと有原はタイプが違う気がする。「幅広く考えての起用」というところか。
だけど僕はナイスアイデアだと思った。栗山監督のコメント通り「色んな景色が見えてくればいい。もっとすごい球を投げてくれると思う。これが少しでも航平の野球人生のプラスになってくれたら嬉しい」である。