ハマの主砲・筒香が見せた打撃練習の意味――ドラ1ルーキー安田に授けた金言【マリーンズ浦和ファーム通信#46】
6月12日にZOZOマリンスタジアムで行われた横浜DeNA戦の試合前。マリーンズのドラフト1位ルーキー・安田尚憲は、ベイスターズの主砲・筒香嘉智の打撃練習を見学する機会に恵まれた。
2018/07/06
千葉ロッテマリーンズ
「絶対にブレるなよ」
筒香のフリー打撃は徹底的な逆方向への打撃に徹していた。左中間の逆方向に綺麗なライナー性で高い確率でスタンドインさせていた。入団以降、長打力をアピールすることを意識するあまりに引っ張ってばかりいた安田。これもまた同コーチが目の前で見せたい光景だった。そしてやはり、その後に実現した会話の機会で安田は「打撃練習でどのような意識で取り組んでおられますか?」と質問をした。答えは「逆方向へ打つことを意識している。最初から最後まで徹底的に逆方向。そうすれば自然と引っ張って右方向へも大きいのを打てる」というものだった。
真剣に目を輝かせながら質問を続ける若者の姿に筒香はいつしか数年前の自分とダブらせたのかもしれない。最後に何度も口にした言葉がある。「ブレるなよ」。今や日本を代表する左の長距離砲の位置にいる男も1年目から活躍したわけではない。入団から4年間、試行錯誤しながら5年目で大輪の花を咲かせ、今の位置にいる。その間に悩み、苦しみ、自分を見失いかけたこともあるのだろう。苦労の先に待っている自分を信じて「絶対にブレるな」という言葉をマリーンズの背番号「5」に送り続けた。
「失敗で溢れている道を歩きながら人は成長をしていく。失敗は苦しみや辛い気持ちを伴うけど、そこで諦めずに耐えられるか。貫き通せるか。そういう事だと思う。けどおれは一流のインスピレーションは分からない。本人同士は分かり合えたんじゃないの?」
なにかを感じ合い、沢山のヒントを手に入れて帰路についた若者の背中を見つめながら大村コーチはずっと前から温めていたこの機会の実現が成功したことを確信した。
それから数日後の6月22日のイースタンリーグ・横浜DeNA戦(ZOZOマリンスタジアム)。安田は左中間スタンドに本塁打を放った。5月12日以来の4号本塁打は逆方向にライナーで飛び込む見事な一発。横浜の主砲を彷彿させるようなアーチだった。ダイヤモンドを一周する若者に大村コーチはベンチで思わず独り言をつぶやいた。
「なんて美しいホームランだ。マリンの左中間にだね! 人が2年、3年で覚えることをアイツは数日でやってしまいやがった。これは末恐ろしい」
筒香から安田へ。そしてその先へ。強打者たちはそうやってスターの階段を昇っていくのだろう。