移籍2年で能力開花。前半戦の殊勲者「2番大田泰示」に寄せる明るい未来【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#80】
「プラスワン投票」でオールスター初選出が確定していた大田泰示だったが、直近の試合で骨折し、登録抹消。開幕から試行錯誤した打順は、2番大田の起用によって打線として機能を果たし、現在チームを離脱しているが後半戦もキーマンであることに変わりはない。
2018/07/16
オールスター直前の骨折
西日本豪雨を思って不安と心配にさいなまれた週末だ。僕は長野県松本市の取材から昼過ぎに帰宅し、日曜日の午後、敵地マリンスタジアムのロッテ戦を見ていた。8日の15回戦だ。試合は6回表、西川遥輝のタイミリー3塁打が出て、ロッテ・酒居知史をノックアウト、リリーフに田中靖洋が立ったその初球だった。田中のシュート(ツーシーム?)が逸れて大田泰示を襲った。大田は打ちに行くタイミングだったからよけきれず、ボールは手に当たって高く弾んだ。大田が叫び声を上げる。かがみ込んで左腕をだらっと下げた。映像を見てるだけで痛さが伝わってきた。
骨折してなければいいなと思ったのだ。いったんベンチに下がって、根性で1塁走者として出てきたけれど、骨折に気づかないケースもあり得る。その場はアドレナリンで痛みがおさまったりするのだ。結局その試合、大田はベンチに下げられた。妙にはっきり覚えているのは、打席に入るとき「前半戦の殊勲者はタイシだな」と思った矢先だったからだ。オールスターブレークに入る直前、頭はついついそういう風に働いていた。僕の考える2018年シーズン前半戦の殊勲者は、投の上沢、マルチネス、主将の中田といった主力級を抑えて、大田泰示なのだった。
そうしたら左手第五中手骨の骨折で登録抹消だ。全治3~4週間の見通し。しかも残念なことにオールスターゲームの「プラスワン投票」で初選出されていたのである。辞退のコメントが球団から発表された。
「ファン投票で多くの方々が票を入れてくださいましたが選ばれず、今回プラスワン投票で選んでもらったことは自分の中でのご褒美だと思っています。(中略)今回は残念ながらケガで出られませんが、選んでもらったことは自分の中では本当に光栄なことです。後半戦で復帰したら、ファンの方々に投票して良かったと思ってもらえるように一生懸命プレーしたいと思いますし、みなさんに喜んでもらえるように頑張ります」(中略えのきど)
ま、このコメントにツッコむのも何だが、プラスワン投票でトップ選出されたことは「自分の中では本当に光栄」ではなく、オフィシャルな事実だ。もちろん代わりに出場するオリックス、安達了一選手の栄誉がいささかも損なわれるわけではないけれど、僕らファイターズファンにとっては大いに誇りである。僕らは持ち前の能力を開花させ、移籍2シーズンでパのスターに成長した大田泰示を晴れ舞台に送り出したかった。