防御率1点台で59年ぶり日本記録更新! ヤクルト投手陣を覚醒させた「意識改革」【新・燕軍戦記#2】
あのツバメ投手陣がとんでもないことをやってのけた。4月11日の巨人戦(東京ドーム)に1対2で敗れて連勝が3でストップしたものの、これで開幕から14試合連続で相手を3点以下に抑えた東京ヤクルトスワローズが、1956年に西鉄(現埼玉西武)ライオンズが樹立した日本記録を59年ぶりに塗り替えてしまったのだ。昨年は両リーグワーストの防御率にあえいだ投手陣が、これほどの変貌を遂げた理由とは……。
2015/04/12
「しつこく」言い続けた結果の『粘り強さ』
とにかく先発、救援ともに実に粘り強い。前述の成瀬もそうだが、4月4日の横浜DeNA戦(横浜)では石川が初回に筒香嘉智の本塁打で2点を失いながらも追加点を許さず、逆転勝利を呼び込んでいる。抑えのバーネットも登板6試合中5試合で走者を出しながらも、けっしてホームにはかえさない。7日の中日戦(神宮)では、1点リードの8回に登板した古野正人が2死満塁のピンチを招きながらも後続を三振に仕留め、相手に追いつくことを許さなかった。
この『粘り強さ』はどこから来ているのか? 昨季途中で先発から救援に転向し、今季は唯一の中継ぎ左腕としてここまで7試合無失点を続けている中澤雅人は言う。
「まずはゼロで抑えるということなんですけど、『点を取られても動揺しないで次のアウトをしっかり取ろう。次の点をやらないようにしよう』っていうのを常に(高津臣吾、伊藤智仁)両コーチから言われています。今も練習前にそういう話が出ますし、そうやってハッキリ言ってもらえると、『こうしていけばいいんだ』ってみんなで同じ方向を向いていけます」
投手陣の『女房役』である中村も、捕手の視点からこう証言している。
「三木さん(三木肇作戦コーチ)や克則さん(野村克則バッテリーコーチ)にも『点を取られたとしても、粘り強く次の1点をやらないように』って口を酸っぱくして言われてるんですけど、その意識だと思うんですよね。去年までは点を取られるとズルズル行ってしまったところがあったんですけど、『ここでなんとか粘っておこう』ってなると気持ちも引き締まってきますから」
点を取られても次の点を与えない──その意識が投手陣全体に浸透している。それは就任2年目の高津投手コーチも認めるところだ。
「粘り強さは出ましたね。意識付けというか、単純にしつこく言ってます。『次(の塁)に進めるな』とか『次の1点をやるな」とか、『しつこいおっさんだなぁ』って思われてるかもしれないけど(笑)。洗脳じゃないですけど、そういうふうに覚醒していかないとね。それがいいか悪いかは分からないですけど、みんな本当に粘りは出たと思います」
とはいえピッチャーが奮闘を続けながらも、打線がなかなか点を取れずに6つの負けがすべて1点差という状況は、ファンにとってフラストレーションの溜まるものかもしれない。しかし、こういう試合を続けていけば、早ければ来週にもファームで実戦復帰と言われている主砲ウラディミール・バレンティンが戻ってきた暁には、その一振りで拾える試合も多くなるはずだ。
ちなみに59年前に開幕から13試合連続3失点以下の記録を作った西鉄は、その時点で8勝4敗1分けで3位。ヤクルトは現在8勝6敗で2位タイ。西鉄はその年、最大7.5ゲーム差をひっくり返して逆転優勝を飾っているが、果たして今年のヤクルトは……。今後が楽しみなのは間違いない。
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