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黒田博樹と新井貴浩 カープを愛した、かつての投打の柱が再び主役になった日

黒田博樹の復帰3試合目。この試合も辛抱強く、ゲームをつくった。6回2失点で2勝目。連敗時のうっぷんを晴らすような快勝でカープは3連勝を飾った。黒田に勝利をプレゼントしたのは、2007年にともにカープを去り、7年ぶりにともに復帰した新井の一打だった。

2015/04/12

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試合の中で修正して、6回2失点

 黒田博樹の復帰3試合目となった昨日(4月11日)の対阪神戦は7対2。連敗時のうっぷんを晴らすような快勝でカープは3連勝を飾った。
 黒田は6回116球を投げて、被安打7の2失点。きょうもクオリティスタートの数をひとつ積み上げた。

 合計18個のアウトのうち三振6、ゴロアウトが11。フライアウトは6回2死満塁のピンチで奪った最後のセンターフライのみ。まるで甲子園のファンに名刺代わりに置き土産をしたような1個だけだった。
 終わってみれば、いつものようにシナリオでもあったかのような味わい深いピッチング。 最速152キロのスピードも披露して、今後にさらなる期待を抱かせてくれた。

 けっして調子がいいようには見えなかった。
 初回からマウンドで肩で息をしているような黒田がいた。2回は福留にライトスタンドにホームランを運ばれたこともあってか、しきりに首をかしげるシーンも見られた。どこかしっくりこない投球に、ボールを見つめて小言をいいつづけていたようでもあった。

 そんな試行錯誤の試運転は2回まで。3回からはきっちり修正してタイガースの打者が面食らうほどボールを動かし、巧みな配球を見せた。振れば逃げ、当たれば自打球、前に飛んだらゴロアウトと、これぞMLB帰りの黒田のピッチング。その日の調子に合わせてマウンドで修正していくという、メジャーでの「苦しいばかりだった」という7年間で培った投球術が冴えた。

「完成された投手がつくるゲームは、その投手の生き様を反映している」

 そんなことをおもわせる、黒田会心の投球だった。

耐えて、積み重ねてきた成果が実を結ぶ

 8年ぶりとなった甲子園のマウンド。いわば〝地元凱旋登板〟を、大阪時代の黒田に思いをはせながら観戦していた。
 2回のカープの攻撃でバッターボックスに入った黒田が、打ち気満々でスイングする姿を見たときは、彼が高校時代に夜の素振りをしていたという住之江の大通りにかかる陸橋へとイメージは飛んでいた。

 実際にその陸橋の上にあがってみると、住之江の町が東西、南北に素通しで伸びていた。その景色はあまりにも広く遠く、視界の先には果てしない世界が広がっていた。

 上宮高校では控えの投手に甘んじていた彼は、バットで素振りをしながら、その景色に将来を展望できない自分の心象風景を重ねていたのではないだろうか。
 あいもかわらず援護をもらえないまま、ひたむきに投げていた黒田に、あの陸橋の上で黙々とスイングを繰り返していたであろう黒田の姿がダブって見えた。

 2回に田中のタイムリーで1点が入ったものの、その裏に黒田は福留にホームランを喫して同点。そこからカープにチャンスらしいチャンスもなかった3、4、5回が、黒田の人生の高校時代に重なった。
 それでも黙々と投げつづた黒田に、高校時代の不遇を、そしてひたむきな人間の美しさを、私は見ていた。

 6回になってカープ打線は堰を切ったように得点を重ねた。その最後の4点目を黒田の執念のバットが叩き出したとき、あの陸橋の上での成果の見えなかった素振りが結実したのだと、わがことのように狂気していた。

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