炭谷銀仁朗の意志を感じた配球 郭俊麟に要求した1球のチェンジアップ【中島大輔 One～この1打席をクローズアップ】
西武に入団したルーキー、郭俊麟は2連勝で迎えた3戦目のロッテ戦で敗戦投手となった。ロッテ打線につかまりながらも、女房役の炭谷が郭に要求した1球を今回はクローズアップしたい。
2015/04/13
ベースボールチャンネル編集部
制球に苦しんでも、投げながら修正できる投手
郭俊麟にとって、プロ入り3試合目のロッテ戦は散々な結果に終わった。立ち上がりからストレート、変化球ともにコントロールに苦しみ、初回に押し出しで先制点を献上。2回には3安打と1四球で3点を奪われ、この回限りで降板した。
「全体的にコントロールが悪く、ストライクゾーンに入ったボールは甘すぎました。チームに申し訳ないです。今日の反省点を活かして、次回の登板に備えます」
そう肩を落とした右腕だが、注目すべき1球があった。マウンドを降りる直前、2回2死1塁から井口資仁を空振り三振に斬ってとったときのボールだ。
その前の5球目、2ボール、2ストライクから投じたチェンジアップは危険な球だった。シュート回転して内側に入り、ヒヤリとするコースに流れてきたのだ。井口は高いボールに手を出さなかったものの、この日はチェンジアップを思うようにコントロールできていなかった。
だが、井口への6球目。炭谷は続けてチェンジアップを要求したのだ。郭俊麟が腕を振ると、ボールが真ん中低めからストーンと落ちる。井口のバットは空を切り、新人右腕は苦しいイニングを自らの手で切り抜けてみせた。
仮にチェンジアップが5球目と同じようにシュート回転していたら、パワーのある井口に長打を浴びせられていた可能性もある。それでも炭谷はチェンジアップを要求し、郭俊麟は見事に投げ切った。
このとき、4月4日のソフトバンク戦の前に炭谷がしていた話を思い出した。その日の先発は野上亮磨で、「前回登板で序盤、変化球の制球に苦しんだが、うまく修正した」という話を振られたときのことだ。
「野上はもともと器用なタイプです。岸（孝之）さん、野上、牧田（和久）さんは、悪い球でも楽な状況で使っていけば、修正する能力のあるピッチャー。その日あかん球があれば、別の球で組み立てるというピッチャーではありません」
たとえ制球に苦しんでいても、投げながら改善していくことができる。岸や野上と同じように、郭俊麟もそうした能力を持っているのだろう。
炭谷は長いスパンで見て新人投手をリードし、あえてチェンジアップを要求して空振り三振に仕留めた。FA権を行使せずに残留したときから優勝への強い思いを口にし続けている正捕手が、目線をどこに向けているのか――。
改めて、その意志を感じることのできる1球だった。
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