松沼博久・雅之、ドラフト外の肖像#1――「お前なんか辞めちまえ」博久が初めて出会った、うるさい監督
日本プロ野球では1965年にドラフト制度導入後も、ドラフト会議で指名されなかった選手を対象にスカウトなどの球団関係者が対象選手と直接交渉して入団させる「ドラフト外入団」が認められていた。そんなドラフト外で入団した野球選手をクローズアップし、1冊にまとめたのが10月15日に発売となる『ドラガイ』だ。今回は収録してある中から松沼博久・雅之編をダイジェストで掲載する(全6回)。
2018/10/05
あんなうるさい監督は今まで知らない
その理由はすぐに分かった。
「とにかく監督がうるさい。あんなうるさい監督は今まで知らない。ぼくは中学の野球部しか知らなかったので、他の学校の比較はできないですけれど、とにかくうるさい」
練習中、監督はノック用のバットを常に握っていた。そして何かあるとそのバットで選手を殴った。
「お前なんか辞めちまえっていうのが口癖なんですよ。監督がうるさいからみんな辞めたんだなと。ぼくの代でも十何人、辞めましたから。練習量自体はごく当たり前ぐらいにしか思っていませんでしたけど、口が悪かったですね」
彼は、退部者が続出しても頓着せず、野球は10人いればいいのだと言い放つこともあった。男の名前は木内幸男といった。後に、取手二高、そして常総学院の監督として夏の甲子園で三度優勝を成し遂げることになる。ただし、このときはまだ木内が燻っていた時代だった。
書籍情報
『ドラガイ』2018年10月15日発売
(著者:田崎健太/272ページ/四六判/1700円+税)
<収録選手>
CASE1 石井琢朗(88年ドラフト外)
CASE2 石毛博史(88年ドラフト外)
CASE3 亀山努 (87年ドラフト外)
CASE4 大野豊 (76年ドラフト外)
CASE5 団野村 (77年ドラフト外)
CASE6 松沼博久・雅之(78年ドラフト外)
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『ドラガイ』
【著者紹介】
田崎健太 たざき・けんた
1968年3月13日、京都市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て、1999年末に退社。スポーツを中心に人物ノンフィクションを手掛け、各メディアで幅広く活躍する。著書に『W杯に群がる男たち―巨大サッカービジネスの闇―』(新潮文庫)、『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社)、『維新漂流 中田宏は何を見たのか』『真説・佐山サトル タイガーマスクと呼ばれた男』(集英社インターナショナル)、『ザ・キングファーザー』(カンゼン)、『球童 伊良部秀輝伝』(講談社 ミズノスポーツライター賞優秀賞)、『真説・長州力 1951-2015』『真説・佐山サトル タイガーマスクと呼ばれた男』(集英社インターナショナル)『電通とFIFA サッカーに群がる男たち』