苦しい北海道に元気を勇気を。中田翔のホームランを。【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#84】
北海道を襲った大地震。いまだ収束の兆しが見えない中、ファイターズのペナントレースは続く。
2018/09/09
だからこそ中田翔のホームランが見たい
僕はあのときの山崎武司の姿を、中田翔に重ねている。今、誰のホームランが嬉しいかって中田翔のホームランだ。去年、成績が上がらず、SNS等でけちょんけちょんに言われていたのを思い出す。やれチャンスに弱い、4番を剥奪しろ、見ていて胸がつぶれる思いだった。それでなくても「大谷翔平を歩かせて4番中田勝負」という屈辱的なシーンを多く目にした。今年の前半戦、「近藤健介を歩かせて4番中田勝負」というシーンも見た。
だけど、みんな実は中田翔が大好きだ。チームの真ん中で色んなものに耐えてきた男だ。今年はキャプテンマークをつけて、野球に取り組む姿勢が変わった。守備でも献身的なプレーをする。懸命に走る。ヘッドスライディングも見せた。ベンチでも人一倍喜ぶ。打てても打てなくても、チームのために全て出し切る。ずっと打率が低かったが、夏場に来てガンガン打ちだした。いつの間にか、近藤健介、レアードより中田のほうが警戒されるようになっている。
2011年、山崎武司が夢を託されたように2018年、中田翔がみんなの願いをのっけてホームランを打ってくれる。それは泣きたくなるほど嬉しいことだ。僕は中田が打ったときの球場の、何ともいえない陽性の空気が大好きだ。みんな文句なく笑顔なんだよ。「来たーーーっ!」と、こう、ツーンとなってる。バンザイしている。的が大きいんだ。老若男女、みんなが大声あげてバンザイできるのが中田翔のホームランだ。みんな「やっぱり中田だ」と思う。「やっぱり」って思ってもらうのは大変だよ。それは生き様だよ。
本稿執筆時点で胆振地方の余震は続いている。計画停電の話も持ち上がっている。苦しい苦しい時間だ。トンネルのなかにいるようなものだ。僕は沢山「チンネン」のような人が暮らしているのだと思う。マジメに働いて、家族を大事にして、いつしか青春をかけた野球から遠ざかっている。だけど、球場では血が騒ぐ。血が騒ぐことが生きていることだ。
いつも打ってくれと思っているが、今は特別思う。中田翔、気持ちのいい一発をたのむよ。みんなの血を騒がせてくれよ。
打たれても揺るがぬ想い。宮西は「最高のプロフェッショナル」【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#85】