キーワードは「主体性」。オーストラリア球団と提携、DeNAが構築する新しい選手育成システム
今年7月、横浜DeNAベイスターズはオーストラリアン・ベースボールリーグ(以下ABL)のキャンベラ・キャバルリーとの戦略的パートナーシップ締結を発表した。果たしてその締結の狙いとは何か?
2018/09/25
選手・スタッフの今後につなげるための派遣
前例のない派遣システム。キャバルリーとの提携に関し、萩原氏は「主体性」がキーワードになっているという。
「選手たちはそれぞれ自らの克服すべき課題を持っています。球団としては、彼らが決められたことをやるのではなく、決めることから自分で考えられる選手になってもらいたいんです」
選手が課題を自ら見つけ、自主的に動くこと。時に封建的ともいえるプロ野球界にあって、選手の成長を促すのにこのような考え方は重要だと言えるだろう。
また選手ばかりではなく、コーチングスタッフやトレーナー、ブルペンキャッチャーなどのチームサポーターの派遣、延いてはビジネススタッフを送り込むことも視野に入れてる。今季からDeNAではチームスタッフに向けた英語教育に取り組んでいるが、このような側面からも英語圏のキャバルリーとの提携はプラスになる。萩原氏によれば選手だけではないスタッフらの派遣は、あらゆる面におけるスキルアップはもちろん、彼らの今後のキャリアを考慮しての判断でもあるという。
「選手をより高いレベルで育成するには、その模範となるべきスタッフをしっかりと育てることも球団にとっては大切なことです。そうすることで選手のレベルも向上すると考えています」
では、派遣期間に関してはどれぐらいの長さを考えているのか。台湾の例を挙げれば長くても年内までというのが最終ラインだが。
「いや、ABLシーズン終了まで行きたいというのであれば構いませんし、実際に希望している選手はいます。もちろん、何故そうしたいのか明確な理由があることが重要です。現状では前半、後半、フルに参加といった感じで分かれると思います」
DeNAとしては台湾、オーストラリアだけでなく、今後は中米諸国も加えた世界三カ所を拠点にオフシーズンのトレーニング環境を整えていきたいと考えている。
ただ、気になるのは慣れない土地、システム、練習による選手の体調面だ。故障をするリスクも高いのではないか。
「その点に関しては2014年に初めて筒香(嘉智)選手をドミニカに送り出す際十分に議論しました。リスクをすべて回避することはできませんし、結論として彼らにその意思があるのならば、我われとしては尊重し受け入れて支援するということ。筒香選手につづき、昨年は乙坂(智)選手がメキシコに行きましたが、人生を長く見たとき、行かないよりも行って経験を積んだ方が本人のためになると判断しています。拒否するのではなく認めて、球団としてはそのための環境や安全確保に努めることこそ、選手のためになると考えています」
そのコンセプトにおいてほぼ前例のないスタンスでABLへと選手とスタッフを送り出すDeNA。結果が出るのはもう少し先のことかもしれないが、この試みが果たしてどんな成果をもたらすのか今後も刮目したい。