西武を勝利へ“加速”させるベテラン栗山。「やることは一緒」経験が成す巧みなメンタルコントロール
パシフィック・リーグで10年ぶり優勝を目指す首位の埼玉西武ライオンズ。福岡ソフトバンクホークスとの天王山で3連勝したことで、それが大きく近づいた。打線を引っ張ったのは35歳の栗山巧外野手だ。17年目のベテランが見せた冷静な背中には、一体どんなメンタルに裏打ちされているのだろうか。
2018/09/24
“天王山”初戦で2点タイムリー。打線に勢いつけ2連勝に繋げる
試練の9日間8連戦の戦績は8勝0敗。パ・リーグ首位の西武が2位福岡ソフトバンクホークスとの天王山を含む8連戦を圧倒的な力で勝ちきって、優勝マジックを点灯させた。
破竹の8連勝を挙げる中で貴重だったのはベテランの存在だ。
ハイライトシーンとして思い浮かぶのは、15日のソフトバンクとの天王山初戦の1回裏の攻撃だ。
西武は、力みの見えるソフトバンクの先発・千賀滉大投手を攻め立て1死満塁の好機を作ると、ワイルドピッチで1点を先制。さらにカウント2-2から5番・栗山巧外野手がバットを一閃するとセンター前に落ちる貴重な2点タイムリー二塁打を放ったのである。
1-0から3-0。
この日の西武は先発に3年間勝っていなかった郭俊燐投手を立てていたから、貴重なアドバンテージになったのは間違いなかった。1点差の5回裏には浅村栄斗内野手の3ラン本塁打などで突き放し、11-5でソフトバンクを圧倒した。
天王山の初戦を勝利した西武はソフトバンクをスイープ。さらに、その後の3位北海道日本ハムファイターズ戦も2連勝を飾ったのだった。
「ソフトバンクに3連勝したことで、日本ハム戦は落ち着いて戦えたと思います。日本ハムに対して、余裕を持つということはさすがになかったけど、ソフトバンクに3連勝で来たのは大きかったと思います」
そう語ったのは、35歳になるベテラン栗山だった。
この怒涛の9連戦が始まる前から、やはり、キーを握っていたのは、栗山、中村剛也内野手ら10年前の日本一を知る者たちの存在だった。
「経験」という言葉で片づけられるが、栗山の言葉から感じられるのはどんな場面でも平静を保つことができるメンタルコントロールだ。
「明日なき戦い」、「天王山」、「試合を決める一打」
メディアが好むこのフレーズは時に選手を強烈な緊張感に陥れる。
開幕戦がそうであるように、どの試合も143分の1に変わりはないのだが、シーズンの終盤になればなるほど、たくさんの場面が重たいプレッシャーとなって押し寄せてくるのだ。
だが、栗山はそうした場面に直面しても考えるのはたった一つのことだとこう語る。
「どうしても、これからの戦いは重くなってきますよね。でも、一番大事なのは目の前の自分のプレーに集中する事。結局、やること一緒なんですよ。僕が若かった時も、先輩らがよく言っていました。『大事な試合なんて関係あれへん、やることは一緒や』って。伝統っていうわけじゃないけど、ずっとそう思ってやってきた」