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吉見一起は、トミー・ジョン手術の「最新の成功例」になるか?【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、トミー・ジョン手術を受けて、見事な復活を果たしている吉見一起についてだ。

2015/04/24

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手術期間でリフレッシュされた体

 ダルビッシュ有の戦列離脱が決定するなど、相変わらずトミー・ジョン手術の是非が話題になっているが、日本で、この手術の鮮やかな「成功例」が生まれつつある。

 中日の吉見一起は、4月23日のヤクルト戦で7回を無失点。開幕以来20イニング連続無失点を記録した。
 トミー・ジョン手術から22カ月、吉見が戻ってきた。
 吉見は2005年、トヨタ自動車から希望枠で中日に入団し先発投手として活躍してきた。
 まずキャリアSTATSを見てみよう。赤字はトミー・ジョン手術後の成績だ。

広尾様0424表1

 2008年の後半からローテーション入り。
 翌年、エースの川上憲伸がMLBに移籍してからは先発の柱としてチームを引っ張ってきた。最多勝にも輝いたこともあり、5年連続二けた勝利はまさにエースだ。
 しかし2013年6月に右ひじの張りを訴え、6月4日に右肘内側側副靱帯の再建手術(トミー・ジョン手術)を受けた。
 13カ月のリハビリを経て昨年7月に復帰。しかし、成績は思わしくなかった。

 今季は、先発の5番手として4月1日の巨人戦に登板、以後3試合素晴らしい投球を見せている。
 もともと吉見は抜群の制球力が武器である。三振数を四球数で割ったSO/BBは3を超えれば優秀とされるが、吉見は4~5と優秀な数字を記録していた。しかし2013年にこの数字が急落、復帰後の2014年も良くなかったが、今年は8.50と素晴らしい数字をここまで残している。

 投球の効率を示す、1回当たりの球数(標準は15球)も急回復。
 結果として1回当たりの走者数(安打、四死球)を示すWHIPは、先発投手の合格点と言われる1.20を大きく下回った。
 吉井は単なる球威や制球ではなく「投球精度」が向上した。わずか3試合だが、その投球内容は手術前よりも上回っている。

 トミー・ジョン手術によって投手のパフォーマンスが術前より向上する例はしばしば見られる。
 プロ野球の一線級の投手は高校時代から休むことなく投球を続けている。肩、ひじだけでなく、体全体を酷使し続けている。
 トミー・ジョン手術によって実戦から遠ざかる13~16カ月は、ひじだけでなく、酷使し続けてきた体全体を休ませる格好の「チャージ期間」になるのだ。うまくリハビリをすれば、リフレッシュし、手術前よりも良い投球をすることも可能になる。

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